自治会班長選びで障害をさらされ男性自殺

さいとうゆたか弁護士

1 「おかねのけいさんできません」と障害の記載強要されたとして遺族が訴訟提訴

報道によると、知的・精神障害がある男性が、自治会の役員らに障害者であることを記した書面を書くよう強要され自殺したとして、遺族が自治体と役員らに損害賠償訴訟を起こしたということです。

報道では、自治会の班長をくじ引きで選ぶことになり、男性が障害を理由に選考から外して欲しいと申し出たところ、役員らが男性に障害があることなどを記載した書面を書くように求め、男性がそれを書いて提出すると役員らはその書面を他の住民らにも見せると言った、その翌日に男性が自殺した、とされています。

2 自治会の役員らの言動は許されるものだったのか?

それでは自治会の役員らの言動は許されるものだったのでしょうか?

障害者基本法は以下のとおり定めます。

第三条 第一条に規定する社会の実現は、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを前提としつつ、次に掲げる事項を旨として図られなければならない。
二 全て障害者は、可能な限り、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと。
  よって、障害者は地域社会における共生の権利を持っていると考えられます。
  障害者において、その能力上遂行が困難な役割を担わないと生活できないということであれば、地域社会における共生ができているとは言えないでしょう。
  ですから、障害のため自治会の班長を行うことが困難な場合、自治会の班長をしないでも生活できることも障害者基本法は求めていると考えます。
  そうであれば、自治会の班長を外して欲しいとの要望を受け入れないこと、受け入れるとしても障害という重大なプライバシーの侵害と引き換えでなければ受け入れないということであれば、到底障害者基本法の定める地域における共生は実現できていないと思われます。
  よって、自治会の役員において、班長を外すことを他の住民から理解して欲しいという気持ちを持っていたとしても、男性に障害について書かせたり、それを他の住民に伝達しようとしたとすれば、不法行為と評価される可能性はあったと考えます。
  現時点で事実関係は必ずしも明らかではありませんが、裁判で共生社会のあり方について議論が深まることを祈念しています。

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