脊髄損傷(四肢麻痺、両下肢可否)と自動車改造費用の賠償(交通事故)

さいとうゆたか弁護士

1 交通事故と自動車改造費用

交通事故で重度の後遺障害が残った被害者が自動車で移動するにはその自動車を改造しなければならないことがあります。
そのような場合、改造費用の賠償が認められることがあります。
脊髄損傷(四肢麻痺、両下肢麻痺)の被害者については、自動車で移動するについて自動車の改造が必要となることが多く、自動車の改造費用の賠償を認めた裁判例も多く存在します。

 

2 脊髄損傷(四肢麻痺、両下肢麻痺)と自動車改造費用

自動車改造費用を認めた裁判例

四肢麻痺の被害者の自動車改造費用に関する東京地裁平成11年7月29日判決は、以下のとおり述べ、自動車へのリフト等架装代及び8年毎の買い替え費用として443万6700円の賠償を認めています。

自動車改造のためのリフト等架装代は一五〇万円と認められ、平均余命期間の五六年間につき、八年ごとの買替えの必要性を認め、これにより算定すると、以下のとおり、四四三万六七〇〇円となる。
一五〇万円(既払分)+一五〇万円(改造費)×(〇・六七六八+〇・四五八一+〇・三一〇〇+〇・二〇九八+〇・一四二〇+〇・〇九六一+〇・〇六五〇)(ライプニッツ係数)=四四三万六七〇〇円

横浜地裁令和2年1月9日判決は、以下のとおり、被害者がアクセル・ブレーキを操作できないために改造が必要となる場合において、改造費用28万円、81歳までの6回の買い替えの費用の賠償を認めました。

「完全対麻痺のために足で自動車のアクセル・ブレーキを操作できないというのであり,移動に利用する自動車の改造が必要と認められるところ,証拠(甲72,75)によれば,その改造に必要な部品代やメーカーでの取付けのための陸送費は合計28万円であり,耐用年数は5年(平均余命の81歳までに6回の購入・買換えが必要)であると認められる。」

このように、脊髄損傷(四肢麻痺、両下肢麻痺)の被害者については、自動車改造費用(あるいは福祉車両と一般車両との差額)及びその買い替え費用の賠償を請求できる可能性があることになります。

新規車両購入費用の賠償

四肢麻痺の被害者の福祉車両購入費に関する東京地裁平成16年5月31日判決は、以下のとおり述べ、福祉車両と一般車両の差額95万円を6年毎支出するという前提での賠償を認めました。

原告Aが車椅子に乗車した状態で乗降できる福祉車両購入費と同型の一般車両購入費との差額は,おおむね95万円ないし100万円である(甲16の1,2,甲42の1,2)。税法上の耐用年数(甲18)等を参照すると,原告Aは6年ごとに,少なくとも95万円を支出する必要性があるというべきである。原告Aは,症状固定時45歳であったところ,平成14年簡易生命表によれば,45歳女性の平均余命は41.31年であるから,将来分として6年ごとに合計6回の支出を要すると認められる。そうすると,車両改造費は次の計算式により,231万0780円となる(小数点以下切捨て)。
(計算式)950,000×(0.7462+0.5568+0.4155+0.31+0.2313+0.1726)≒2,310,780

このように車いす等に対応した新規車両購入の賠償が認められる場合もあります。

ただし、新たに車両を購入するまでの必要はなく、従来ある車両に対する改造費のみが認められるという場合もあります。

神戸地方裁判所平成27年9月3日判決は、「写真撮影報告書(甲43,52)には,日産キューブの助手席に置いた車椅子によりサイドミラーが見えにくい状況が撮影された写真があるが,これのみでは同車両の車椅子用の改造がおよそ不可能または困難であるということはできず,同車両の構造上,車椅子用の改造に支障があるため,同車両とは別途,車両購入が必要であったことを認めることはできない。したがって,車両費及び将来の買換費用は,本件事故と相当因果関係がある損害であると認めることはできない。」として、新規車両購入費用の賠償を否定しました。

車いす等に対応した新規車両購入費用の賠償を求めるためには、従来車両の改造では不十分であることを主張立証する必要があります。

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