部下の30代女性に好意を伝えた50代男性が厳重注意処分を受けたことについて

さいとうゆたか弁護士

報道によると、宮城県の機関勤務の50代男性が、部下の30代女性に好意を伝え、手を触るなどしたことにより女性が強いストレスを受けたとして、県が「業務遂行に大きな支障を生じさせ」たことを理由に男性を厳重注意処分に付したということです。

果たして好意を伝えることで厳重注意処分に付されるものか、疑問に持たれた方もいらっしゃると思います。

高松地裁令和1年5月10日判決は、上司から非常勤職員に対するセクシャルハラスメントがなされたとして損害賠償請求がなされたケースについて、以下のとおり述べ、好意を伝えただけでは不法行為とはならないとしています。

「被告Y1が原告に送信したメールは,原告に対し異性としての関心を抱いていたことをうかがわせるものではあるが,その内容が,原告に対する好意を示すにとどまらない性的なものであるとは評価できず,また,これらのメールに対する原告の対応も証拠上明らかではないから,いずれも不法行為(違法な行為)に当たるとはいえない。」

このように、上司部下の関係であっても、好意を伝えるだけでは性的なものではなく、不法行為とならないとされています。

よって、宮城県のケースについては、好意を伝えたことを厳重注意処分の根拠にしたことには疑問もありうると思います。

ただし、宮城県のケースでは、好意を伝えつつ手をつかんだともされています。

男女雇用機会均等法第十一条は、「事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」として、事業主は「性的な言動」(セクシャルハラスメント)に対応する措置をとらなければならないとしています。

この「性的な言動」について、「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」では、「性的な言動」には「必要なく身体に触ること」が含まれるとしています。

よって、手をつかんだ行為は「必要なく身体に触ること」に該当し、セクシャルハラスメントに該当しうるでしょう。

なお、徳島地裁平成31年3月18日判決は、手等を触った行為を不法行為として損害賠償を命じています。

結論として、報道の事実関係を前提とした場合、50代男性に対する厳重注意処分は不当とは言えないと考えます。

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