半沢直樹第4回 東京中央銀行の電脳への融資の法的問題

さいとうゆたか弁護士

1 スパイラル株買収のため東京中央銀行が電脳に巨額融資、三笠副頭取らの法的責任は?

半沢直樹第4回では、電脳の収益にごまかしがあるにも関わらず、東京中央銀行が巨額の貸付をしていたことが明らかとなりました。

このように銀行が収益に胡麻化しのある会社に融資をした場合、関与した銀行役員に刑事・民事上の責任が発生する可能性があります。

 

2 銀行が架空取引のある取引先に融資した場合の役員の賠償責任

例えば、日本振興銀行の役員が問題のある取引先(SMEG)に対する融資を決裁したことの善管注意義務違反が問われた東京地裁平成28年5月19日判決は、以下のとおり述べ、返済能力が十分でない会社に対する融資を決裁した役員に善管注意義務違反を認め、5億の賠償を命じています。

「本件融資の内容は、貸付総額が85億円、新規出捐額が10億5009万2056円、融資実行後の貸付総額が約95億0400万円(前記第2の1(3))と高額に及ぶものであったところ、前記アのとおり、本件融資決議時点において、SMEGには上記貸付総額を返済するに足りる能力がなく、かつ、担保も不足している状況にあり、前記イのとおり、被告はそのことを認識していたか、少なくとも認識すべき立場にあったと認められる。それにもかかわらず、被告は、債権保全のために既存の担保を引き続き徴求するほかには特段の措置をとることなく、漫然と本件融資を承認し、実行させたものといえるから、被告には善管注意義務違反、忠実義務違反が認められる。」
「また、前記ウのとおり、被告は、SMEGの経営状況、資産状態等について十分な調査、検討を行うことなく、その安全性について十分な確認をしないまま本件融資を承認したものであり、この点からしても、被告には善管注意義務違反、忠実義務違反が認められる。」

ここで問題とされているSMEGの経営状況等としては、例えば、SMEGが得ていた業務委託料が実態に比べ過剰であったことがあげられます。裁判所はこの業務委託料はSMEGの損失を補填するためのごまかしだったとしています。そして、裁判所は、「SMEGの業務委託料に係る売上額は、同社の業務における収益性を評価するに当たって適切なものとはいえず、業務委託料収入のうち過大な部分は、SMEGが行う委託業務の本来の収益性を超えて計上されているものといわなければならない。」としています。

その上で、「日本振興銀行の取締役兼代表執行役であった被告は、SMEGの業務の実態や資産状態を、少なくとも同社に対する融資の際においては、当然に把握していたか、仮に実際にはこれらを把握していなかったとしても、上記役職に就いていた被告は、これらを把握すべき立場にあったと認められる。」として、代表執行役だった被告としては上記の取引のごまかしに気づくべきだったとして賠償責任を認めたのです。

東京中央銀行で電脳に対する融資にかかわった役員についても同様に賠償責任が認められる可能性があります。

そうはいっても、役員みんなが判断に関わった融資について、頭取が賠償請求等の措置を取ることができるのでしょうか?

東京中央銀行の自浄作用が注目されます。
さいとうゆたか法律事務所トップはこちらです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です