5歳児死亡の展示物火災で男子学生ら無罪主張(東京地裁)

2016年11月、明治神宮外苑のイベント会場で展示物のジャングルジムが燃えて、五歳児が亡くなった事件の公判が本日東京地裁でありました。

ジャングルジム内部に白熱灯を放置したとして重過失致死傷罪に問わた大学生らは、発火するとは考えなかったと述べ、弁護側は過失を否定しているとのことです。

この点、過失犯が認められるには、結果の予見可能性が必要だとされています。

弁護側はこの予見可能性を争っていると考えられます。

それでは、この件で予見可能性は認められるでしょうか?

この点、ドライヤーにより火事が発生した事件についての名古屋地裁昭和59年4月25日判決が、予見可能性の有無を考える上で参考になると思います。

同判決は、ホテル従業員が、使用後のドライヤーをコンセントから抜かないで、敷布団近くに放置していたがために火事が発生し、多数の人が死傷したという事件について、従業員に刑事上の過失を認めています。

弁護側は予見可能性を争っていましたが、判決は、「本件ヘヤー・ドライヤーのような発熱体が、発火の原因となり、火災の発生及び人の死傷という極めて重大な結果を惹起すべき性質を具有することは、通常予見可能であり、他方これを防止するためには一挙手一投足の労をもつて足りることを考えると、結果を予見し、これを未然に防止するための措置を講ずることは、通常人の尽くすべき注意義務ということができる。そして着火に至る一定の条件について具体的に予見し、又は予見しうる場合にのみ注意義務があるわけではない」として、コンセントから外さないドライヤーを布団の近くに置いておくことで火事となり人が死傷する可能性を認識することは通常可能だとして、予見可能性を認めました。

白熱灯が熱を発することは常識の部類に入るでしょうし、名古屋地裁判決を踏まえると、そのような性質を持つ白熱灯を可燃物の近くに設置した場合に火事や人の死傷の結果が生じうることについては「通常予見可能」である、つまりジャングルジム内に白熱灯を放置することで人が死傷することについては予見可能性や過失があると言える可能性はあると考えます。

大切な人命が失われた事件ですから、被告人の権利にも配慮しつつ(弁護人は被告人の権利を擁護するのが職責ですからむやみに弁護人が主張することについて批判すべきではありません)、再発防止にもつながるような、妥当な判決がなされることを祈念しています。

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