京都市立芸術大学VS京都芸術大学の名称差止訴訟で判決

さいとうゆたか弁護士

 報道によると、京都市立芸術大学が、京都造形芸術大学から京都芸術大学への名称変更の差止を求めた訴訟について、大阪地裁は名称変更の差止を認めなかったとのことです。

 京都市立芸術大学は、その略称である「京都芸術大」の名称は著名表示であり、不正競争防止法による差止が認められると主張し、京都芸術大学側は著名表示ではないとして争ったようです。

 不正競争防止法は、以下のとおり、「他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用」することなどを不正競争に該当するとしています。
 

第二条 この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
二 自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為

 そして、不正競争防止法第三条は、「不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。」としています。
 よって、他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、よって他人の営業上の利益を侵害するような場合、差止が命じられうることになります。

 ここで「著名」かどうかについては裁判例の蓄積があります。

 大阪地裁平成30年4月17日判決は、堂島ロールについて、以下のとおり述べ、マスコミでの取り上げ方などを中心に著名性を認定しています。
 
「原告商品及びその商品等表示である「堂島ロール」は,平成18年頃から大阪市を中心に知られるようになって,そのことが,新聞や雑誌等の記事やテレビ番組で取り上げられるにつれて「堂島ロール」の商品名は全国に知られ始め,これと並行して原告がその販売店舗を急速に全国に展開していくことで売り上げが伸びるとともに,雑誌,テレビ等のマスコミで取り上げられる機会も一層増え,これらの相乗効果で,遅くとも被告会社が設立された平成24年6月までには,原告標章は,原告商品の出所を表示する商品等表示として,日本全国で需要者の間に広く認識され,その程度は周知の域を超え著名といえるほどになっていたものと認められる。」

 京都市立芸術大学と京都芸術大学の訴訟でどのような要素をもとに著名性が否定されたのかは現時点では判然としませんが、報道等のされ方は大きな判断要素となったと思われます。

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