肺がんとアスベスト・石綿ばく露との因果関係(労災)

さいとうゆたか弁護士

1 肺がんとアスベスト

アスベストにばく露した場合、肺がんとなる可能性が高まります。

ところが、中皮腫と違い、肺がんはアスベスト以外の原因でも罹患することが多いにありえます。

そのため、肺がんになった方について、それがアスベスト・石綿ばく露が原因かどうか争いになることが多いのです。

 

2 どのような場合にアスベスト・石綿ばく露による肺がんと認められるか?

 

厚生労働省基 発 0 3 2 9 第 2 号「石綿による疾病の認定基準について」は、以下のとおり、石綿ばく露労働者に生じた肺がんが労災認定される基準を示しています。

 

「石綿ばく露労働者に発症した原発性肺がんであって、次の(1)から(6)までのいずれかに該当するものは、最初の石綿ばく露作業(労働者として従事したものに限らない。)を開始したときから 10 年未満で発症したものを除き、別表第1の2第7号7に該当する業務上の疾病として取り扱うこと。

(1) 石綿肺の所見が得られていること(じん肺法に定める胸部エックス線写真の像が第1型以上であるものに限る。以下同じ。)。
(2) 胸部エックス線検査、胸部CT検査等により、胸膜プラークが認められ、かつ、石綿ばく露作業への従事期間(石綿ばく露労働者としての従事期間に限る。以下同じ。)が 10 年以上あること。ただし、第1の2の(3)の作業に係る従事期間の算定において、平成8年以降の従事期間は、実際の従事期間の1/2とする。
(3) 次のアからオまでのいずれかの所見が得られ、かつ、石綿ばく露作業への従事期間が1年以上あること。
ア 乾燥肺重量 1g 当たり 5,000 本以上の石綿小体
イ 乾燥肺重量 1g 当たり 200 万本以上の石綿繊維(5μm超)
ウ 乾燥肺重量 1g 当たり 500 万本以上の石綿繊維(1μm超)
エ 気管支肺胞洗浄液 1ml 中5本以上の石綿小体
オ 肺組織切片中の石綿小体又は石綿繊維
(4) 次のア又はイのいずれかの所見が得られ、かつ、石綿ばく露作業の従事期間が 1 年以上あること。
ア 胸部正面エックス線写真により胸膜プラークと判断できる明らかな陰影が認められ、かつ、胸部CT画像により当該陰影が胸膜プラークとして確認されるもの。
胸膜プラークと判断できる明らかな陰影とは、次の(ア)又は(イ)のいずれかに該当する場合をいう。
(ア) 両側又は片側の横隔膜に、太い線状又は斑状の石灰化陰影が認められ、肋横角の消失を伴わないもの。
(イ) 両側側胸壁の第6から第 10 肋骨内側に、石灰化の有無を問わず非対称性の限局性胸膜肥厚陰影が認められ、肋横角の消失を伴わないもの。
イ 胸部CT画像で胸膜プラークを認め、左右いずれか一側の胸部CT画像上、胸膜プラークが最も広範囲に描出されたスライスで、その広がりが胸壁内側の1/4以上のもの。
(5) 第1の2の石綿ばく露作業のうち、(3)のア、イ若しくは(4)のいずれかの作業への従事期間又はそれらを合算した従事期間が5年以上あること。ただし、従事期間の算定において、平成8年以降の従事期間は、実際の従事期間の1/2とする。
(6) 第2の4の要件を満たすびまん性胸膜肥厚を発症している者に併発したもの。

 

例えば、大阪高裁令和1年7月19日判決も、「亡Aに関しては,第1型のじん肺の所見があり,また,それ自体で高濃度曝露の指標となり得る胸膜プラークとまではいえないが胸膜プラークがあり,かつ,10年以上にわたり石綿曝露作業に従事し,多量の石綿に曝露されていたのであるから,肺がんの発症リスクを2倍以上に高める石綿曝露があった場合に肺がん発症を石綿に起因するものとみなし,石綿繊維25本/ml×年を発症リスクが2倍になる累積曝露量とみなす平成24年基準を満たしているものというべきである。」として、上記基準に従って肺がんが石綿・アスベスト由来かどうかを判断しています。

ですから、石綿。アスベストで肺がんになったかどうかが問題となるときには、上記「石綿による疾病の認定基準について」の基準該当性を丁寧に検討する必要があるのです。

 

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