クレーンからの落下物と労災

交通事故

1 クレーンからの落下物をめぐる労災

クレーン作業をしているときにクレーンから物が落ち、労働者がケガ等をするという労災事故はかなり頻発しているものです。

以下、その場合の使用者の責任について検討します。

 

2 裁判例の状況

神戸地裁尼崎支部平成15年12月25日判決は、「制限荷重が1トン以上の揚貨装置またはつり上げ荷重が1トン以上のクレーン,移動式クレーンもしくはデリックの玉掛けの業務に従事できる者は,①玉掛技能講習を修了した者,②職業能力開発促進法施行規則別表第4の訓練科の欄に掲げる玉掛け科の訓練を修了した者,③そのほか労働大臣(当時)が定める者に制限されているところ(労働安全衛生法61条,同法施行令20条16号,同法施行規則41条),これらの規定は,一定の危険な作業を伴う業務を就業制限業務として,必要な知識と技能を有する者のみを従事させることにより,重大災害を予防して労働者等の作業関係者を保護することを目的としていることからすると,同規定は安全配慮義務の内容というべきである。」として、玉掛作業の有資格者ではない者に玉掛作業をさせた者について安全配慮義務違反があるとしています。

前橋地裁桐生支部平成30年1月18日判決は、クレーンの操縦者Cについて、「クレーンの運転者は,クレーンの操作を開始するにあたり,自らも玉掛けが適切にされているか否かを確認すべき注意義務があるというべきであるところ,Cは,亡Aの合図に従うのみで,自ら確認することはなかったものと認められる。本件においては,玉掛けが適切でなかったといえるから,Cも玉掛けが適切にされているのか否かについて注意を払っていれば,その不適切さに気づいて事故を回避できた可能性は高かったものといえる。」として、玉掛確認の不十分さを理由に安全配慮義務を肯定しています。

また、同判決は、クレーンの操縦者Cについて、「亡Aは,アームの後方からクレーンの下に入ってきたと認められるところ,クレーンの操縦者は,クレーンの下に人がいないことを常に確認しながら運転すべきであり,人がクレーンの下に入り込もうとしている場合には操作を停止すべき注意義務があるというべきである。しかるに,Cは,誰もクレーンの下に入ってこないものと軽信し,亡Aがクレーン車の下に入ってくるのに気づかないままクレーンの操作を継続したものと認められる。以上によれば,Cにはクレーンの下に入ろうとする者の存否についての注意を怠った過失があるものというべきである。」として、クレーンの下に人がいないか確認すべき義務の違反を認めています。

クレーンからの落下物をめぐる労災事件の多くは、玉掛などのミスとクレーンの付近に人が出入りしていたことが原因となっています。

特に、クレーンの付近に人が出入りしていた類型については、被災労働者自身の過失も認められるケースが多くなります。

そのような場合でも、使用者の黙認等を主張立証し、過失割合を極小化していくことが重要です。

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