河井前法相が弁護人全員解任 刑事裁判はどうなる?

さいとうゆたか弁護士

1 河井前法相が弁護人全員を解任!

 

報道によると、公職選挙法違反の罪に問われていた河井前法相が弁護人全員を解任したとのことです。

公職選挙法の買収罪では、選挙運動を取り仕切る総括主宰者の場合、刑は4年以下の懲役等となります。

そして、刑事訴訟法289条は、必要的弁護について以下のとおり規定します。

「死刑又は無期若しくは長期三年を超える懲役若しくは禁錮にあたる事件を審理する場合には、弁護人がなければ開廷することができない」

4年以下の懲役であれば、長期3年を超える事件なので、河井前法相の刑事裁判は必要的弁護事件ということになります。

ですから審理を弁護人抜きで行うことはありえないと考えられます。

裁判所としては、別の私選弁護人を選任する意向があるかどうか確認し、その上で選任意思が不明確である場合には、「弁護人がなければ開廷できなない場合において、弁護人が出頭しないとき若しくは在廷しなくなったとき、又は弁護人がないときは、裁判長は、職権で弁護人を付さなければならない」と規定する刑訴法289条2項を用いて国選弁護人を選任することになると思われます(なお、河井前法相に資力十分だったとき、国選弁護費用は河井前法相が負担することになると思われます)。

2 新たに選任された弁護人を解任したらどうなるか?

 

問題は、さらに弁護人を解任するような場合、訴訟が遅延するのではないかということです。

次に選任されるのが国選弁護人である場合、国選弁護人については私選弁護人選任まで裁判所が解任を許さないと思われます。

次に選任されるのが私選弁護人である場合、そもそも事件が必要的弁護事件ではない以上、新たな私選弁護人が解任されても、裁判所としては新たな弁護人が選任されるまでの間において弁護人抜き裁判をする可能性もあります。

この点、松尾浩也・井上正仁編「ジュリスト増刊 刑事訴訟法の争点(新版)」161頁は、「必要的弁護事件においてさえも、弁護人の責めに帰すべき事情による不在廷の場合には、弁護人不在廷のままで当該期日に予定された実体的審理をなしうるとする下級審公判実務の運用がみられるようになった」との紹介もなされているところです。これは被告人の責めに帰すべき場合も同様でしょう。

つまり、再度弁護人を解任するような場合、弁護人抜きでの審理もありうるということです。

仮に遅延目的での弁護人解任がなされるとしてもかえって河井前法相にとっては不利な結果になりかねないということです。

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