仙台高裁が福島原発事故避難者訴訟で国の責任を認める

さいとうゆたか弁護士

本日、仙台高裁が、福島原発事故に関し、高裁として初めて国の責任を認める判決を言い渡しました。

これまで地裁では国の責任については判断が分かれており、高裁が初めて国の責任を認めた意義は大きいと考えます。

例えば、山形地裁令和1年12月17日判決は、東電の責任を認めつつ、被告国の責任を否定しています。

 同判決は、「(平成14年)2月に津波評価技術が刊行され、同年7月には本件長期評価が公表されたこと、被告東電が、本件長期評価で示された三陸沖から房総沖の海溝沿いのどこでも地震が発生する可能性があるとする見解を具体的にどのように扱うかを検討するための参考として実施した平成20年試算において、明治三陸地震の波源モデルを福島県沖の海溝沿いに移動した場合の津波水位を試算したところ、本件原発の1号機から4号機までが設置されている主要建屋敷地南側の浸水高は最大で15・7メートルになるとの結果が出たこと、その制度は別として、平成20年試算を平成14年に本件長期評価が発表された直後に実施することは可能であったこと」等から、平成14年において、国において原発敷地に浸入するような津波を予見することはできたとしました。
 
 しかし、同判決は、この予見可能性は強いものではなく、国が「本件事故を発生するのを防止するに足りるありとあらゆる措置を執るべき」だったとは言えないとしました。
 
 その上で、国として東電に津波を含めたバックチェックを要請していたこと、新潟県中越沖地震で原発敷地で想定外の地震が発生し国が電力会社に耐震バックチェックを求める等しなければならなかったこと等の事情を踏まえ、国が行使すべき規制権限を行使しなかったとは言えないとし、国の責任を否定しました。

 原発敷地に津波が来ることが予見できたとしつつ、それを踏まえた最大限の措置をとるべき義務があることを否定した山形地裁判決は、原発事故が与える損害の重大性を過小評価したものであり、到底維持できないものだと言えます。また、地震対策をしてきたから津波対策をしなくても仕方なかったとの論理も意味不明です。

 原発敷地に津波が来ることは予見できたという事実関係は否定することはできず、そうであればそれに対してまともな対策を講じなかった国の賠償責任を認めることが必然だと言えるでしょう。

 今後、他の高裁においても、国の責任を認める判決が続き、最高裁でも維持され、被害者が救済されることを強く期待します。

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