非正規社員に対する退職金不支給を適法とした最高裁判決について(メトロコマース事件最高裁判決)

さいとうゆたか弁護士

本日、最高裁判所は、非正規社員に対する退職金不支給の違法性が問題となったメトロコマース事件について、退職金不支給が合法との判断を示しました。

原審の東京高裁平成31年2月20日判決は、退職金不支給を違法としていました。

東京高裁は、まず、退職金の法的性質について、長年の功労について報償する意味があるとしました。

その上で、「少なくとも長年の勤務に対する功労報償の性格を有する部分に係る退職金(退職金の上記のような複合的な性格を考慮しても,正社員と同一の基準に基づいて算定した額の少なくとも4分の1はこれに相当すると認められる。)すら一切支給しないことについては不合理といわざるを得ない。したがって,上記(ア)の労働条件の相違は,労使間の交渉や経営判断の尊重を考慮に入れても,上記控訴人らのような長期間勤務を継続した契約社員Bにも全く退職金の支給を認めないという点において不合理であると評価することができるから,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たると解するのが相当である。」として、正社員の4分の1程度の退職金は払われるべきものとしました。

NHKの報道によると、最高裁は、「正社員は複数の売店を統括し、サポートやトラブル処理などに従事することがあるが、契約社員は売店業務に専従し、一定の違いがあったことは否定できず、配置転換も命じられない」として、退職金不支給は不合理な差別に該当せず、許されるとしたようです。

しかし、正社員の退職金は、売店の統括やサポートやトラブル処理だけに対応するものとは思われませんし、契約社員について全く退職金を支給しないことを正当化する根拠は十分ではないように思われます。

今回の最高裁判決が、少しでも格差の是正をしようとしてきた下級審の姿勢に冷や水をかけるものであったことは否定できません。

いずれにせよ、今回の最高裁判決は、あくまで、正社員と契約社員の間に業務等の違いがある事例についての判決でしかないことは留意されるべきでしょう。

正社員と契約社員がほぼ同じ業務に従事しており、双方とも配転もないような場合には、契約社員のみ退職金を支払わない扱いは最高裁判決を前提としても不合理な差別とされる可能性はある言うべきでしょう(最高裁判決自体も、ケースによっては退職金不支給が違法となるとの指摘はしているようです)。

今回の最高裁判決にめげず、格差是正に向けた活動が一層展開されるべきでしょう。

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