伊之助コスのために誤って殺傷された場合の法的責任

鬼滅の刃の伊之助コスで山林を歩く行為が問題に

現在、鬼滅の刃の伊之助コスをして山林を出歩く人がいるということで、猟師に誤って殺傷される危険性があると指摘されています。

実際に、猟師が伊之助コスをしている人を猪と勘違いし、その人を撃ってしまった場合、どのような法的責任が生ずるでしょうか?

伊之助コスの人を誤って撃った場合の法的責任

実際、人を動物と誤って撃ってしまうという事故はこれまでも発生しています。

猟師が誤って人を撃ってしまった場合、業務上過失致死罪等の成立が問題となります。

この点、北海道で、人を鹿と誤って射殺してしまった事件について、札幌地裁令和1年6月26日判決は、被告人を懲役2年執行猶予5年に処しています。

この事案の特徴は以下のとおりです。

・本件現場は林道上であり,人の立ち入る可能性がある場所であったこと

・木々も密集していたのであるから,より一層慎重に確認すべきであったこと

被害者は森林官として同僚とともに公務に従事している際に本件被害にあったものであり,目立つようにオレンジ色のヘルメットと赤色のジャンパーを着用していたこと

このように、被害者は林道という通常人が存在しうるところに、オレンジ色のヘルメットと赤色のジャンパーという、鹿とはかなり違う格好でいたのですから、被告人の落ち度は明らかというべきです。

しかし、仮に、伊之助コスをしている人が、林道ではないところを歩いていて、猟師に誤って射殺された場合はどうでしょうか?

その場合には、猟師に過失を認めることは困難であり、猟師は無罪とされるかもしれませんし、そもそも検察官はそのようなケースでは起訴すらしない可能性もあるでしょう。仮に有罪だとしても、札幌地裁判決の事案との対比で、猟師が実刑になることはほぼ想定されないと言ってよいでしょう。

また、民事の損害賠償請求についても、そもそも猟師に過失なしとして損害賠償責任も認められない可能性もありますし、人だと気づくことができたとして損害賠償責任が認められるとしてもかなり大きく過失相殺をされ、賠償金も小さなものとなる可能性があります。

もちろん、刑事責任や民事責任が認められても命は返ってきませんが、伊之助コスで山林を歩いていると死ぬかもしれませんし、その場合でも猟師に刑事上・民事上の責任が問われない可能性もあるということになりますので、伊之助コスでの山歩きは極力避けるべきことになるでしょう。

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