夫婦間における建物からの明け渡し請求(離婚)

離婚問題

1 夫婦間における建物からの明け渡し請求

夫婦仲が悪化した場合、一方配偶者が他方配偶者に家から出て行ってもらいたいと思うことがあります。
不動産の名義がどちらか単独名義であれば、所有者は相手方に家から出て行ってもらえる権利がありそうにも思えます。
しかし、民法第七百五十二条は、「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」と規定しているため、所有権に基づく明け渡し請求権はかなり制限されます。

2 夫婦間における建物からの明け渡し請求に関する裁判例

東京地裁昭和47年9月21日判決は、「夫婦である原被告の関係が破綻の危機に瀕していることは先に認定したとおりであるが、法律上婚姻状態が存続している以上、夫婦に同居と協力扶助を命じている民法七五二条の法意に照して、右の請求を認容するのは相当でない。」として所有者からの他方配偶者の退去請求を認めませんでした。

他方、東京地裁平成3年3月6日判決は、「原告と被告とは平成元年一一月一三日以降別居状態にあることからしてその間の婚姻生活は既に破綻状態にあるものと認められ、今後の円満な婚姻生活を期待することはできないものといわざるを得ず、しかも、右に認定した事実によれば右婚姻生活を破綻状態に導いた原因ないし責任は専ら被告にあることが明らかというべきである。以上の認定判断に徴すれば、本訴において被告が本件建物についての居住権を主張することは権利の濫用に該当し到底許されないものといわなければならない。」として、夫婦関係が破綻に陥っている場合に、破綻原因を作った配偶者に対する明け渡し請求は認められるとしています。

夫の母から妻に対する明け渡し請求についても権利濫用として認められないことがありえます。
ただし、東京地裁平成9年10月23日判決は、
・夫の母は自宅以外に資産がない
・妻は十分な収入がない
・夫の妻は夫婦の生活のために建物を貸したのであって、夫婦関係が破綻すれば明け渡しを求めるのは当然
・夫において妻に対して十分な婚姻費用を払うなどしてきたのであり、夫は妻の住居を含めた財産面について援助を惜しむとは考えられないこと
という事情において、夫婦に建物を貸していた夫の母から妻への明け渡し請求を認めています。

夫婦間の明け渡し請求に比べ、かなり明け渡し請求が認められるハードルは低いと言えるでしょう。

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