能力不足を理由とする解雇

1 解雇の効力

労働契約法16条は、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」としています。

ですから、会社から見て、ある労働者の能力が十分ではないように見えても、解雇に客観的に合理的理由がなく、社会的相当性がない場合には、解雇は無効となります。

菅野和夫著「労働法第12版」790頁以下では、能力不足による解雇について以下のとおり述べています。

・長期雇用慣行企業の場合  成績不良が企業経営に支障を生ずるなどして企業から排斥すべき程度に達していることが必要

中核的従業員については解雇が緩やかとされる場合もあるが、教育指導などの解雇回避措置がないと解雇無効となりやすい

・転職市場型企業の場合   長期雇用慣行企業と同じ

このように成績不良の程度、解雇回避措置の有無等が解雇の効力を判断する大きな要素となります。

2 裁判例

東京地裁平成31年2月27日判決は、上記の一般的傾向に沿った判決です。
通信ネットワーク等の企画・開発等を業とする会社でのシステムエンジニアの解雇の効力が問題となりました。

・最低評価を受けたこともあるが、そうでないこともある

・最低評価も相対評価であり、それが解雇に結びつくものではないこと

・上司からは改善点の指摘もあるものの、肯定的な評価もあること

・会社に貢献しようとする意欲があること

・懲戒処分がないこと

から、当該労働者は、「業務成績は不良であるものの、改善指導によって是正し難い程度にまで達していると認めることはできない」としました。

その上で、

・労働契約において職務限定がされていないこと

・労働契約において高度な職務遂行能力が求められているわけでもないこと

・業務改善指導や配置転換、職務等級や役職引き下げなどの対応も可能であったこと

等を踏まえ、つまり解雇回避措置がなされていないことを踏まえ、解雇は無効としました。

東京地裁令和4年3月16日判決も、

・会社側はgrade3の業務レベルに達していないことを理由に解雇をしたが、労働者はgrade2に降グレードされていたこともあり、契約上grade3に達しない場合に解雇できるとされていたとは考えられないこと

・労働者はいったんgrade2に降格したが、その後grade3に復帰していること

・直近ではBC,つまり評価レベルを下回る評価となったが、それは「本人の努力により標準的なレベルに到達する見込みのあるレベル」であったこと

から、解雇に値するほどの不良があったとは言えないとしました。

 

労働者の能力についての会社の評価は主観的となりやすく、また、過剰な能力を要求することになりやすく、よって能力不足を理由とした解雇の多くは有効性に疑問があります。

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