客観証拠がない場合の残業代請求

さいとうゆたか弁護士

1 残業代と根拠資料

残業代請求に関しては、パソコンのログ記録、メモ、セキュリティ記録、タイムカード記録、GPS記録等をもとに請求がされ、労働時間が認定される場合があります。
他方、何ら客観的資料もなく、ほぼ記憶だけで請求せざるを得ない場合もあります。
そのような場合でも、労働者の主張について信用性を裏付けるような事情があり、かつ,使用者がまともに労働時間管理をしていないため労働者主張の労働時間に対する適切な反証をなし得ない場合には、労働者の主張する労働時間が認定されることがあります。

2 客観的証拠がないのに労働時間が認定された事例

福岡地裁令和1年9月10日判決は、特別養護老人ホームの職員の残業代が争われた事件についての判決です。
この事案では、労働時間を裏付ける客観証拠に乏しく、労働者の供述を主な根拠として労働時間の認定がなされています。
同判決は、「原告がショートステイサービス部門在籍中、所定の終業時刻後にショートステイサービス部門に移動してきた併用者への対応を要したことは合理的に推認することができる。また、原告が各部門在勤中の業務として日々作成すべき書類等を日中の所定労働時間内に利用者のケアをしながら並行して作成することは、安全や衛生に相当の配慮をしつつ多数の利用者に順次対応するという介護業務の性質に照らし、困難であることも想定されるところであり、サービスの提供が終了した後にまとめて書類作成等の業務を行い、そのために上記主張程度の時間を要していたとの原告の供述は合理性がある」としています。
つまり、業務の性質や量等を裏付けとして、労働者の労働時間についての供述の信用性を肯定しているわけです。
ですから、労働時間についての客観証拠がなくとも労働者主張の労働時間が肯定されることもありえます。
しかし、同判決も、「原告の残業時間に関する供述は、感覚的ないし印象的な側面が存するようにうかがわれ、さほどの業務量が存していたのかも十分には立証されているとはいえず、日によっては定時に帰宅することもあったと考えられることなどからすれば、その日々の残業時間は、原告が主張するよりも控えめに見ざるを得ない」としているところです。
やはりメモやGPS記録等の記録があるとないとでは全然違いますので、できるだけ残業時間については記録を取っておくべきです。

3 新潟で残業代請求については弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)にお気軽にご相談ください

労働時間一般についての記事もご参照ください。
労災、過労死、残業代などの問題でお悩みの方は弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)にお気軽にご相談ください。

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