相続放棄

さいとうゆたか弁護士

1 相続放棄制度

被相続人が借金を背負っているような場合、相続人が相続放棄をして、借金の相続を免れることができます。
その場合、プラスの財産も相続できなくなることに注意が必要です。
この相続放棄については、民法第九百十五条が「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。」と定めています。
原則として被相続人が亡くなってから、あるいは被相続人が亡くなったことを知ってから3か月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述をする必要があります。

2 借金があることを知らなかった場合

相続人において被相続人が亡くなったことは知っていたものの、借金等があることは知らなかった場合、借金等があることを知ったときから3か月以内に相続放棄をなしうる可能性があります。
具体的には、相続人が、被相続人の死亡や自分が相続人となったことを知っていても、被相続人の生活歴、被相続人と相続人との間の交際状態、その他諸般の状況からみて当該相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があり、そのため相続人において被相続人に財産がないと信じたような場合、相続人において財産があることを知ったときから3か月の期間が計算されることになります。

以下、裁判例を紹介します。

東京地裁令和1年9月5日判決

東京地裁令和1年9月5日判決は、被相続人が住宅ローンの保証債務を負っていたケースについて、
ⅰ 主債務者による弁済が継続していればただちに弁済の負担や債権者からの請求を受けるものではないこと、よって相続人が保証債務の存在を知らないことも多いと思われること
ⅱ 相続人と被相続人が同居していたものではないこと
等の事情を踏まえ、相続人が銀行からの通知まで保証債務について知らなかったことに相当な理由があるとして、銀行からの通知時点から3か月の間は相続放棄をなしうるとしました。

東京高裁令和1年11月25日決定

東京高裁令和1年11月25日決定は、被相続人の不動産の固定資産税が未納となっていたケースについて、

ⅰ 相続放棄をした者が高齢であったこと、

ⅱ 被相続人と相続放棄をした者は疎遠であったこと、

ⅲ 相続放棄制度について誤解があったため、他の者が代表して相続放棄をすれば自分が別途相続放棄する必要はないと思っていたこと

ⅳ 固定資産税の額もある時期まで知らなかったこと

から、被相続人が死亡したことを知ったときから3ケ月経過後の相続放棄を認めました。

 

このように、例外的場合には、被相続人死去後3か月経過しても相続放棄ができる場合がありますので、そのような場合はまずは弁護士に相談してみましょう。

3 相続放棄をするとすべての責任を免れる?

ところで、相続放棄をした人について、民法第九百四十条は、「相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。」としています。

そのため、相続放棄をしても、自分が実際には関与していない不動産の管理責任を負い続けるのではないかという不安を抱く方も多かったと思います。

この点、令和3年相続法改正により、「相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第952条第1項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。」という条文に改められました。

このため、相続放棄をした人も、自分が占有していない財産について管理責任を負うものではないことが明確化され、相続放棄をした人の不安がかなり軽減されると思います。

改正法の施行日は令和5年4月1日です。

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