実際とは違う日付で作成された自筆証書遺言の効力

相続問題

1 自筆証書遺言の形式

自筆証書遺言は、自分だけで作成するのであればお金もかからず、気軽に作成できるのが利点です。
しかし、法律で定められた形式的要件を満たさないと効力を生じないこともあります。
民法第九百六十八条は、「自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。」としています。
ですから、
・全文、日付、氏名を自書すること
・押印

が自筆証書遺言の有効要件です。
ここで、日付について、実際の日付と違う日が記載されていた場合、自筆証書遺言の効力がどうなるのか、問題となります。

2 自筆証書遺言記載の日付が実際とは違う場合の取扱い

最高裁昭和52年4月19日判決は、「民法九六八条によれば、自筆証書によつて遺言をするには、遺言者がその全文、日附及び指名を自書し印をおさなければならず、右の日附の記載は遺言の成立の時期を明確にするために必要とされるのであるから、真実遺言が成立した日の日附を記載しなければならないことはいうまでもない。」として、自筆証書遺言に記載される日付は実際の日付でなければならないとしました。

ただし、同判決は、「遺言者が遺言書のうち日附以外の部分を記載し署名して印をおし、その八日後に当日の日附を記載して遺言書を完成させることは、法の禁ずるところではなく、前記法条の立法趣旨に照らすと、右遺言書は、特段の事情のない限り、右日附が記載された日に成立した遺言として適式なものと解するのが、相当である。」として、日付以外の部分を記載した遺言書を作成した場合、後に日付を入れた日が遺言書作成日になる、そして記載された日付が実際に日付の記載をした日付(つまり自筆証書遺言を完成させた日)であれば自筆証書遺言の効力に問題はないとしました。

同最高裁判決からすると、自筆証書遺言に記載すべき事項をすべて記載し終わった日が自筆証書遺言作成日であり、自筆証書遺言にはその日付を記載すべきということになります。

しかし、最高裁令和3年1月18日判決は、
・平成27年4月13日に遺言の全文、4月13日の日付、氏名を自書
・平成27年5月10日に押印
したというケース、つまり自筆証書遺言の作成日が平成27年5月10日と思われるケースで、4月13日の日付が記載されていても自筆証書遺言は無効とはならないとしました。

これら二つの最高裁判決からは、自筆証書遺言に、その全文等主要部分を記載した日付、あるいは自筆証書遺言を完成させた日付のいずれかを記載すれば無効とはならないということが明らかとなります。

いずれにせよ、自筆証書遺言は、このような記載要件をめぐるトラブルに発展しやすい類型の遺言ではあります。

遺言はできれば公正証書遺言、あるいは弁護士が作成に関与する自筆証書遺言とすべきでしょう。

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