三菱電機の22円入札 独禁法の不当廉売とならないか?

さいとうゆたか弁護士

1 三菱電機の22円入札

報道によると、三菱電機が、新型ミサイルの調査研究について、22円で落札したということです。
採算が取れないとも思われ、独禁法の不当廉売に該当する可能性が問題となるでしょう。

2 独占禁止法と不当廉売

この点、独占禁止法2条9項三号は、「正当な理由がないのに、商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給することであつて、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの」、つまり法定不当廉売を許されないものとしています。
これとは別に、独占禁止法2条9項に基づく公正取引委員会告示の6項は、「法第二条第九項第三号に該当する行為のほか、不当に商品又は役務を低い対価で供給し、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあること」を不当廉売としています。
このような不当廉売により競業社が駆逐されると、競争が阻害されますし、それはその分野の需要者にとって望ましいことではありません。
独占禁止法2条9項3号の法定不当廉売は、可変費用(仕入れ費用等)を下回る価格で販売等するとの要件を満たす場合にのみ成立します。
告示による不当廉売は、可変費用を下回る価格でなくとも、総販売原価(仕入れ費用のみならず、一般管理費等のコスト全体)を下回る場合でも成立する可能性があります。
三菱電機の22円入札は、可変費用を基準としても、総販売原価を基準としても、不当廉売の要件を満たす可能性がありそうにも見えます。

3 どこまでの費用を考慮して不当廉売と判断するか

しかし、民間企業である三菱電機が22円入札をするにはそれなりの経営上の理由があったと思われます。
例えば、新型ミサイルの調査研究について落札した場合、その後のミサイル調達の上で有利な立場に立つことができるとしたらどうでしょうか?
企業の経営判断としては十分ありうるはずです。
林野庁衛星携帯電話安値入札事件では、衛星携帯電話の端末について1円で札を入れた行為が問題とされましたが、公正取引委員会は、端末購入後に締結される通信サービスに係る利益を含めて考えると不当廉売ではないとしています。
このように、単独の契約だけでみると不当廉売に該当するように見える行為であっても、その後にセットで締結が見込まれる契約によりトータルで収益を得ることができる場合には、不当廉売とされないこともありえます。
このように不当廉売の成否については単独の契約だけで判断できない場合があるので注意が必要です。

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