乳児の窒息死と保育者の注意義務

さいとうゆたか弁護士

横浜地裁横須賀支部令和2年5月25日判決は、生後4ケ月の乳児が吐乳吸引により窒息死した事件について、家庭保育福祉員と家庭的保育事業を実施していた横須賀市の注意義務違反と賠償義務を認めています。

吐乳吸引による死亡事例における注意義務の判断について参考になると思われるのでご紹介します。

1 横浜地裁横須賀支部判決

この事案では、乳児の死因が吐乳吸引かSIDSかが争われました。

判決は、鑑定書等を踏まえ、乳児の死因を吐乳吸引と認定しました。

また、家庭保育福祉員の一般的義務として、

・0~1歳時を寝かしつけるにあたり、15分間隔で、乳児の顔色、呼吸状況を確認する方法で睡眠時チェックを行う義務、寝かせるときには仰向けで寝かせる義務

があったとしました。

さらに、乳児の呼吸を妨げる状況が存在する等保育の具体的な態様によっては、より短い間隔で睡眠時チェックを行う注意義務を負うとしました。

その上で、判決は、当該家庭保育福祉員において、ミルクを与えた乳児が入眠した後、寝返りを打つことができない状態に置いたままにしたので、乳児が吐乳して呼吸を妨げられて窒息死するのを予見できたとし、5~10分間隔で睡眠時チェックをすべきだったとしました。しかるに、当該家庭保険福祉員は、約15分間隔で睡眠時チェックをするにとどまり、その義務を果たさなかったので、当該家庭保育福祉員には注意義務違反があったとし、賠償責任を認めました。

また、判決は、横須賀市について、利用児童に対し、家庭保育福祉員が家庭的保育を適切に実施するのに必要な指導研修を実施すべき一般的義務を負うとしました。

その上で、その具体的内容として、家庭保育福祉員に対し、乳児の睡眠時チェックを行うよう指導研修を実施すべき義務を負っていたのに、その義務を果たさなかったとして、横須賀市にも賠償責任を認めました。

同判決は、家庭保育福祉員の注意義務に関する裁判例ではありますが、保育園等、乳児の保育をする事業者等にも妥当するものと思われます。

保育園や家庭保育福祉員、家庭的保育事業を行う自治体等においては、同判決の示す基準に従った指導研修や乳児の見守りを徹底すべきでしょう。

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