組体操による事故でどのような場合に損害賠償責任が認められるのか?

交通事故

執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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1 組体操による事故と安全配慮義務

組体操により重大な障害を負ったという事案がこれまで多く発生してきましたし、組体操の問題性はつとに指摘されてきましたが、未だに組体操を行っている学校もあるようです。

裁判所は組体操について学校側の責任を認める判決を出してきています。

例えば、名古屋地裁平成21年12月25日判決は、4段ピラミッドの最上位から落下して傷害を負った事故について賠償責任を認めました。

裁判所は、以下のとおり、4段ピラミッドについて、最上位の児童は2メートル以上の高い位置で立ち上がる動作を行い、かつ、安定するかどうかは3段目以下の児童の状況にかかってくるので、落下する危険性を有するものであり、指導する教員には危険を回避・軽減するための指導を十分に行う注意義務があるとしました。

その上で、判決は以下のとおり述べて、教員らが、被害生徒を立ち上がらせないようにピラミッドの状況を十分に把握し合図を出すべき義務、ピラミッドの近くに教員を配置して3段目以下の児童が不安定な場合には組み立てを止めるよう指示すべき義務、落下の自体に備えて補助教員を配置する義務があったとしました。

そして、

「それにもかかわらず,教員らは,原告に対し,危険を回避・軽減するための指導を十分に行っていないうえに,教員は,本件4段ピラミッドの3段目以下の児童が不安定な状況にあったのに,これを把握しないまま漫然と合図を出し,また,教員らは,本件4段ピラミッドの状況を近くで把握し,合図にかかわらず組立てを止めるよう指示することのできる教員を本件4段ピラミッドの近くに配置せず,さらに,原告の落下に対して,補助する教員を本件4段ピラミッドの近くに配置していなかったのであるから,上記の注意義務を怠った過失があるというべきである。」

として注意義務違反を認めました。

そもそも危険性を有し、かつ、練習の機会の少ない組体操自体、存続をさせることについて疑問もありうるところですが、仮に行うとすれば上記したような危険を回避等するなどの指導、組立を止めるよう指示する教員の配置など十分な配慮が求められるところです。

参照:組体操による事故について賠償責任を否定した裁判例

2 組体操による事故と因果関係

組体操で多人数の下敷きになったり、あるいは、高いところから落下した場合、重大な結果と組体操との因果関係を認めるのは容易と思われます。

しかし、大きな外力が加わったと一見して認められない場合には、因果関係が認められないことがあります。

広島地裁福山支部令和5年4月26日判決は、騎馬という組体操後に脳内出血で死亡した生徒についての訴訟です。

判決は、被害生徒の後頭部に上にいた別の生徒の膝があたった可能性を認めつつ、その別の生徒が被害者らの肩に手を置いた状態のまま後方やや右に落下しているとして、その状況において膝が被害生徒の後頭部にぶつかったとしても被害生徒に強い外力が加わったとは言えないとして、脳内出血との因果関係を否認しました。

当該事案では、映像により事故態様が認定されています。

運動会本番の場合には組体操が撮影されていることが多いでしょうから、事実認定の有力な証拠となりえます。

3 組体操による事故があった場合の調査義務違反

広島地裁福山支部令和5年4月26日判決は、組体操事故について学校側の調査・報告義務違反があったとは言えないとしています。

しかし、当該事案においては、学校側は、組体操の画像確認、関係生徒への聞き取りなどを行い、保護者にその結果を口頭で説明をし、かつ、生徒らの供述内容をまとめた書面の交付、映像が収納されたUSBメモリの交付等を行っています。

その上で、適時合理性の認められる調査を行い、その結果を保護者に適切に報告しているとしているのです。

上記のような調査もなされない場合、学校側の調査・報告義務違反が認められる可能性はあるでしょう。

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