
執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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1 交通事故で通院・入院をした場合の慰謝料(交通事故)
目次
交通事故で通院・入院した場合の慰謝料額の基準
交通事故で通院・入院した場合の慰謝料額の基準
交通事故で入院・通院をした場合、入院・通院期間に応じた慰謝料が支払われることになります。
金額としては、一般的に赤本と呼ばれる本に記載された表に基づき算定されることになります(重傷の場合、青本という本に記載された表に基づき算定した方が有利となります)。
例えば、赤本で、1月通院した場合の慰謝料は、28万円、1月入院した場合は53万円となります。
青本の場合、1月通院した場合の慰謝料は16から29万円、1月入院した場合は60から32万円となりますが、特に症状が重い場合には2割増しもありうるとされています。
赤本や青本よりかなり高額な慰謝料を認めた事例としては大阪地裁令和4年7月26日判決があります。
同判決は、約7か月入院し,通院期間は約18か月の事案です。
同判決は、「原告の傷害結果は,外傷性出血性ショック,十二指腸水平脚~空腸起始部縦断裂,膵鉤部損傷,穿孔性汎発性腹膜炎,L2(第2腰椎)破裂骨折,腰椎脱臼骨折,脊髄損傷といった重篤なものであり,原告は「歩いて9月に自宅に帰ることは難しい。今後は車椅子の生活になる。」という告知を受けた後も「昨日の話で目標(お誕生日に外泊する,8月の下旬に退院して9月1日から学校に行く)決めた。それまでに何を頑張らないといけないかな」などと懸命にリハビリテーションに取り組んで車椅子による日常生活動作を獲得したもので,その過程においては「歩きたい,車椅子で学校行きたくない(号泣)。周りに歩ける人ばっかりは嫌や,歩けん人の気持ちなんかわからんもん…学校で何言われるかわからんし…いじめる人もおるもん(号泣)。もう学校なんかいきたくないわぁ…(事故)相手のおじいちゃんなんて一生牢屋から出てきてほしくない(号泣)」などと弱音を漏らしたことがあるように,歩行できないこと等による多大な精神的苦痛を乗り越えてきたものであることに照らすと,原告X1の入通院治療に係る身体的・精神的苦痛を慰謝するための慰謝料額は402万円とするのが相当である」としています。
赤本であれば326万円程度、青本上限でも393万円になると思われますが、傷病の重篤さと精神的苦痛の大きさを踏まえ、高額の慰謝料を認めています。
入院や通院の慰謝料は現実の入院、通院期間に応じて算定されます。
しかし、入院、通院が一定期間見込まれていたものの、やむを得ない理由で入院、通院できなかった場合には、想定された入院、通院期間に応じた慰謝料が支払われます。
大分地裁平成21年4月16日判決は、交通事故で外傷性頚部症候群となり入院したものの、心筋炎となり、4日で外傷性頚部症候群の治療をやめた事例について、一般的に2ケ月の入院・通院を要した等として70万円の慰謝料を認めています。参照:実際の入院等期間によらず慰謝料を認めた判決
交通事故による長期間にわたる通院と慰謝料
通院慰謝料における通院期間基準と実通院日数基準
通院期間基準と実通院日数基準についての裁判例
通院慰謝料における通院期間基準と実通院日数基準
通常は通院期間・入院期間に応じて慰謝料額が決まりますが、通院が長期にわたる場合には実通院日数の3・5倍程度を算定基礎とする場合もあります。青本に記載されているとおり、1年以上にわたり通院頻度が極めて低く1ケ月に2から3回の程度にも達しない場合かどうかを基準とすべきと考えます。
通院期間基準と実通院日数基準についての裁判例
名古屋地裁令和4年9月14日判決は、右手関節TFCC損傷により約19ケ月通院、通院回数51回、4日間入院という事案で、160万円の慰謝料を認めました。
同判決は、「通院期間と比較すると通院頻度は少ない」ことを金額算定の理由としてあげています。
19ケ月通院なら赤本別表Ⅰで慰謝料172万となります。実通院日数×3・5の基準では178日となり、約116万となります。
同事案は、月あたり平均通院実日数が2・7日くらいであり、1ケ月に2から3回の程度という目安は満たさないものです。
そのため、裁判所は、通院期間基準と実通院日数基準との中間的な金額を定めたと考えられます。
那覇地方裁判所令和3年3月17日判決は、12ケ月間通院・実通院日数30日の事案で、「原告は,本件事故により左橈骨遠位端骨折の傷害を受け,これに対し観血的整復固定術を施行されたところ,当該施術部位の骨癒合が確認され術後抜釘術を受けたのは,本件事故から約10か月後の平成30年1月であるから,通院期間が長期に及んでいるとしても,上記治療経過に照らし実通院日数を慰謝料算定の目安とするのは相当ではない。」として実通院日数基準を採用しないとしています。
通院が長期化しても、治療経過によっては通院期間基準が適用されるということです。
通院したくとも通院できない場合の通院慰謝料
なお、通院したくても通院ができず、本来はもっと通院すべきなのに実通院日数が少なくなるような場合もありますが、通院できなかった事情によっては実通院日数×3・5の基準を使わない場合もあります。
例えば、受刑者の作業中の事故についての仙台高裁令和4年8月31日判決は、1年2ケ月の通院期間、実通院日数7日という事案において、受刑者として自由に刑務所外での通院を自由になしうる状況でなかった等として、実通院日数×3・5という基準での算定を否定しました。
ギプス固定と慰謝料
入院をしていない場合でも、ギプス固定中については入院と同じように慰謝料を算定することもあります。
他覚所見がないむち打ち
他覚所見のない頚椎捻挫については、一般の傷害より金額の低い算定表により計算をします。この基準では、通院1月で19万円、入院1月で35万円となります。打撲や挫創のような比較的軽度なケガについても、これに準じて計算されることがあります。その際、通院が長期にわたるようであると、実通院期間の3倍程度を慰謝料算定の基礎とすることが多いです。
交通事故の交渉は弁護士にお任せを
交通事故に関し保険会社が損害賠償額の提示を行う場合、ほとんどの場合にこの通院・入院をした場合の慰謝料がかなり安くなっていますので、注意が必要です。
一回は弁護士に相談してから対応、できれば弁護士に依頼をして対応した方がよいと思われます。
弁護士に依頼した場合、赤本基準の8から9割前後で解決する事例が多いと思います。
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