ブロック塀の倒壊による女児死亡事件の和解

報道によると、大阪北部地震で高槻市の小学校のブロック塀が倒壊し、女児が死亡した事件について、高槻市が和解の方向を固めたとのことです。

この点、ブロック塀の倒壊の危険性は宮城県沖地震のときから問題とされていました。宮城県沖地震では、男児が倒れてきたブロック塀の下敷きとなって即死するという事件が発生しています。

ご遺族は仙台地裁に損害賠償請求を起こしました。

しかし、仙台地裁は、震度5程度の地震が仙台市近郊で通常生ずることが想定される最大級の地震である、よって震度5の地震に耐えうる安全性がないことが明らかでない限りブロック塀に瑕疵があったとはいえない、実際には震度5を超える地震であった可能性があったのでブロック塀に瑕疵があったとはいえないと判断しました。

判決の言葉は以下のとおりです。

「仙台管区気象台で最近五〇年間に観測された仙台市における地震のうち、震度四以上のものは別表(一)のとおりであつて、これによると、仙台においては過去において震度六以上の地震の観測例はないことが認められ、右に加えて建築基準法施行令八八条において水平震度が○・二と定められていたこと等の諸事情を考慮すると、本件ブロック塀築造当時においては、震度「五」程度の地震が仙台市近郊において通常発生することが予測可能な最大級の地震であつたと考えるのが、相当である。」

「本件事故現場においては、震度五を超える強い振動であつた可能性も十分考えられるから、本件地震の震度が五と仙台管区気象台から発表されたこと或いは本件地震により本件ブロック塀が倒壊したことのみから、直ちに本件ブロック塀がその築造当時において通常予測すべき震度五の地震に耐え得ない強度のものであつたと速断することはできないし、他に本件ブロック塀が本来備えるべき震度五の地震に耐え得る安全性を欠いていたものであることを肯認し得る証拠はないから、結局、本件ブロック塀の設置の瑕疵については立証がないものといわなければならない。」

その後、宮城県沖地震での経験も踏まえ、建築基準法施行令が改正され、ブロック塀については控え壁を設けることなどが義務化されました。

今回の高槻小学校の事件では控え壁も作られていなかったようです。また、宮城県沖地震や阪神淡路大震災の教訓を踏まえれば、今回の地震程度の地震は想定すべきだったと思われます。ですから、法的責任を前提とした和解自体は当然のことでしょう。

しかし、これが賠償ということだけにとどまらず、これをきっかけに全国各地で安全性が不十分なブロック塀に対策がなされることを祈念しています。

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