離婚時年金分割

離婚問題

1 離婚時年金分割について

離婚時には年金分割をすることができます。

この年金分割は、厚生年金や共済年金の報酬比例部分について、保険料納付を分けることができるものです

2 離婚時年金分割の効果

対象となるのは結婚から離婚までの期間のものです。

例えば、離婚時において、夫が3000万保険料納付をしてきて、妻が1000万保険料納付をしてきた場合、50パーセントの年金分割では、3000万+1000万=4000万円、4000万円×0・5=2000万円を妻が保険料納付をしてきたものと扱われます。

つまり、妻側の年金額は相応に増えることになりますし、夫側の年金は減ることになります。

3 離婚時年金分割の手続き

年金分割をしたい場合、まずは情報通知書という書類を受ける必要があります。

これは年金事務所や共済組合に請求して受け取ります。

その上で、協議などの手続を経て年金分割を行うことになります。

協議の上、合意ができれば、その合意に基づき年金事務所で手続を行うことになります。

合意ができない場合、家庭裁判所の調停や審判で定めることもできます。

4 年金分割の割合

現実には、裁判所はほぼ50パーセントの年金分割しか認めません。

ただし、例えば財産分与で妻側がかなり譲歩してもらうような場合、50パーセント以下の割合での年金分割の合意をすることもあります。

夫婦の別居期間についても50パーセントでの年金分割がされるのが通例です。

大阪高裁令和1年8月21日決定は、婚姻期間44年中同居が9年程度というケースでも、「夫婦は互いに扶助義務を負っているのであり(民法752条),このことは,夫婦が別居した場合においても基本的に異なるものではなく,老後のための所得保障についても,夫婦の一方又は双方の収入によって,同等に形成されるべきものである。この点に,一件記録によっても,抗告人と相手方が別居するに至ったことや別居期間が長期間に及んだことについて,抗告人に主たる責任があるとまでは認められないことなどを併せ考慮すれば,別居期間が上記のとおり長期間に及んでいることをしん酌しても,上記特別の事情があるということはできない。」、「そうすると,対象期間中の保険料納付に対する抗告人と相手方の寄与の程度は,同等とみるべきであるから,本件按分割合を0.5と定めることとする。」としています。

同決定からすると、長期間の別居があり、かつ、それが年金分割を受ける側に責任があるような場合には例外が認められる余地はあるかもしれません。

5 年金分割をしない合意の効力

離婚協議や調停において、財産分与などについて取り決め、年金分割について取り決めなかった場合に、「当事者間に債権債務はない」との清算条項が入っていたとしても、別途年金分割のの手続を行うことができるとされています。

ですから、年金分割をしないという条件をつけて財産分与で譲歩をするような場合には注意が必要です。

なお、静岡家裁浜松支部平成20年6月16日決定は、「離婚当事者は,協議により按分割合について合意することができるのであるから,協議により分割をしないと合意することができるところ,本件においては,申立人と相手方との間には,離婚協議書による離婚時年金分割制度を利用しない旨の合意がある。このような合意は,それが公序良俗に反するなどの特別の事情がない限り,有効であると解される。上記認定したとおり,当該離婚協議書は,申立人と相手方が話し合った上で,申立人が数日の熟慮期間をおいて下書きをしたことに基づいて作成されたものであり,そして,その作成時には,申立人と相手方との間に何らのトラブルもなかったのであるから,この合意を無効とする事情は存しないといわざるを得ない。」として、年金分割をしないと明記した場合に年金分割をしないとの効果を認めています。

この事案では、「平成19年×月より支給される共済年金は,全額Bが受け取るものとする。年金分割制度によるAの取り分は,これを全て放棄する。」との合意がなされています。

しかし、裁判例の蓄積も乏しく、このような取り決めをした場合に必ず合意どおりの法的効果が認められるとは限りません。

6 3号被保険者と年金分割

平成20年4月1日以降の第3号被保険者(会社員や公務員などの2号被保険者に扶養される配偶者)期間については、一方当事者からの請求により年金分割をすることができる仕組みもあります。

しかし、常に3号被保険者だった方以外は、3号被保険者ではなかった時期の年金分割は合意などでしなければならないので、一括して合意などで分割する方が簡便かと思います。

7 年金分割の請求をなしうる時期

離婚後、2年たつと年金分割の請求はできなくなります。

離婚をしたら速やかに年金分割の手続をした方がよいでしょう。

なお、離婚から2年以内に調停や審判を申し立てたものの、その成立や審判確定等が2年経過後になった場合は、審判確定日又は調停成立日の翌日から起算して1か月内に限り,年金分割の請求をすることができます。

8 厚生年金等以外の年金

厚生年金や旧共済年金以外の年金については年金分割の制度は適用されません。

しかし、財産分与の制度の中で分与される場合もあります。

9 新潟で離婚のお悩みは弁護士齋藤裕へ

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