新潟で後遺障害の逸失利益(交通事故)のご相談は弁護士齋藤裕へ

交通事故

目次

1 交通事故による後遺障害が残った場合の逸失利益

2 逸失利益の計算における基礎収入

3 逸失利益が認められる場合、認められない場合

4 いつまでの収入について逸失利益が認められるか

5 定期金賠償

6 弁護士費用

1 交通事故による後遺障害が残った場合の逸失利益

交通事故により後遺障害が残った場合、その等級に応じて、労働能力が失われたことによる損害(逸失利益)の賠償請求をすることができる場合があります。

各等級に対応する労働能力喪失率は以下のとおりです。

1級   100パーセント

2級   100パーセント

3級   100パーセント

4級   92パーセント

5級   79パーセント

6級   67パーセント

7級   56パーセント

8級   45パーセント

9級   35パーセント

10級  27パーセント

11級  20パーセント

12級  14パーセント

13級  9パーセント

14級  5パーセント

逸失利益の計算は、基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数という算式でなされます。

このライプニッツ係数について、2020年4月1日より前の事故は年5パーセント、4月1日以降の事故は債権法改正に伴い3パーセントとなります(交通事故と債権法改正の記事をご参照ください)。

労働能力喪失率は以上の目安を前後することもありますし、後遺障害が認められると必ず逸失利益が認められるというものでもありません。

12級の後遺障害の場合の逸失利益

14級の後遺障害の場合の逸失利益

をご参照ください。

逸失利益の計算では中間利息控除がされます。

中間利息控除

をご参照ください。

もともと障害がある場合の逸失利益の計算については

既存障害と逸失利益

をご参照ください。

2 逸失利益の計算における基礎収入

実収入を基準とした逸失利益算定

基礎収入は事故前の収入が基本となります。

会社役員については報酬中、労務対価部分が基礎とされます(会社役員の逸失利益をご参照ください)。

基礎収入については、実収入により計算される場合でも、定年年齢後については同じ実収入を得られる可能性はなく、基礎収入を減額すべきという主張が出る場合があります。

この点、大阪地裁令和3年1月29日判決は、以下のとおり述べ、定年まで昇給の可能性等も考慮して、定年以降も実収入を基準とした算定をすべきことを明らかにしています。

「亡Aは,死亡時38歳であり,事故前年の給与収入は630万円であったと認められる。これらの事情より,基礎収入は630万円とするのが相当である。
これに対して,被告は,亡Aが訴外会社の定年年齢経過から67歳までの間,本件事故時の実収入630万円と同額の収入を得られる蓋然性を認められないので,60歳以降は,賃金センサス男性学歴計60歳から64歳の平均年収を基礎収入とするのが相当であると主張する。
しかし,亡Aは,死亡時38歳であり,定年年齢まではなお相当の年数があり,60歳までの22年間に昇給等により実収入が増加する可能性があること,上記実収入630万円は賃金センサス平成30年男性学歴計35歳から39歳の平均年収552万7500円と比較しても大きな乖離がないことが認められる。これらの事情を考慮すると,就労可能年数である67歳(後記ウ)までの間,一律年間630万円を得ることができる蓋然性が認められるというべきであり,被告の上記主張は採用することができない。」

賃金センサスによる逸失利益算定

30歳未満の人については全年齢平均の賃金センサス(統計)の数値を基礎とするのが原則です。

ただし、実収入と賃金センサスとの乖離が大きいなどの場合には賃金センサスでの計算がされないこともあります。具体的には、被害者の実収入が賃金センサスより低い場合、「被害者の職種、就労形態、専門技術や資格の有無、稼働先の規模や安定性、就労態度、転職の可能性等を考慮して、被害者が将来、収入を大きく増加させることを期待できるかどうか」、「(低収入となっていた原因である)健康状態、家庭の状況、趣味やボランティア活動等の優先、就労意欲の不足」等が将来的に継続するかどうかにより、賃金センサスで計算がなされるか否かが決定されるとされています(松本美緒裁判官「若年労働者の逸失利益算定における基礎収入」)。20歳前半より後半の方が賃金センサスでの計算が認められにくいともされます(松本美緒裁判官「若年労働者の逸失利益算定における基礎収入」)。被害者の実収入が賃金センサスより高い場合でも、医師のように資格を持っている場合、公務員や大企業の従業員のように昇給制度が明確にされているような場合を除き、通常は賃金センサスが基準となるとされます(松本美緒裁判官「若年労働者の逸失利益算定における基礎収入」)。

30歳以上の人でも、実収入と賃金センサスとに乖離がない場合、賃金センサスにより計算されることがあります。乖離があっても、賃金センサスの一定割合に相当する金額で計算することもあります(賃金センサスの80パーセントなど)。

収入を証する客観的な資料がない場合に賃金センサスにより計算されることもあります。このような計算がなされる前提としては、相当程度の収入を得ていたことが前提とされます。

賃金センサスの利用にあたっては、男女別、学歴別の賃金センサスを用いるのが原則です。高校生は高卒、大学生は大卒で計算するのが原則です。高校生でも、進学意欲や成績などから大卒で計算すべき場合があります。

家事従事者については女性の賃金センサス(統計)の数値を基礎とします。家事従事者の逸失利益をご参照ください。

年少女子については、男女計の賃金センサス(統計)の数値を基礎とする傾向があります。年少女子の逸失利益の記事をご参照ください。なお、男児については、男性の賃金センサスが使用されます。

失業者については、就労能力・就労意欲がある場合、失業前の収入か賃金センサスによる平均賃金をもとに逸失利益が認められることになります。失業者の逸失利益をご参照ください。

医師、医学生等、一般の人より高収入となることが想定される場合、賃金センサスの中でも職業別平均賃金をもとに算定されることがあります。ただし、たとえば、金融業勤務であっても、学歴や実際の年収を踏まえ、金融業の平均賃金では計算されないことがあるなど、常に職種別平均賃金で計算されるわけではありません。

特定の都道府県に永住することが明確な場合などには都道府県別平均賃金で計算する場合もありえます。

退職金と逸失利益

交通事故により早期退職を余儀なくされ、その結果定年で退職した場合より退職金が減った場合には、退職金について逸失利益の請求をなしうる可能性があります。

松山地裁令和3年6月4日判決は、20歳の警察官が交通事故で死亡したという事案で、定年時まで勤務した蓋然性が高いとし、定年時における平均収入をもとに、中間利息控除をした上で、退職金についての逸失利益の賠償を認めました。

ただし、高知地裁令和2年2月4日判決は、25歳の警察官が交通事故で死亡したという事案で、被害者が若年で、定年時まで長期間があることを理由に、退職金についての逸失利益の賠償を否定しました。

松山地裁判決では、当該職場での就労継続割合等のデータを踏まえ、定年時まで勤務した蓋然性が高いとしています。

よって、若年の被害者が退職金の逸失利益の賠償請求をする場合には、定年時まで勤務した蓋然性について丁寧に立証する必要がありそうです。

障害者の逸失利益

障害者の逸失利益

もご参照ください。

3 逸失利益が認められる場合、認められない場合

後遺障害が認定されれば自動的に逸失利益が認められるわけではありません。

後遺障害が認定され、かつ、減収があれば逸失利益が認められやすいです。

減収がなくとも、被害者がかなり努力をして収入を維持しているような場合にも逸失利益が認められる余地があります。減収がなくとも逸失利益が認められる場合をご参照ください。

逸失利益が認められるとしても、収入減少の程度などによっては等級に比較して少額の逸失利益しか認められないこともあります。

他方、収入減少の程度や職業などによっては、等級に比較して高額の逸失利益が認められることもあります。

歯が欠けた場合の逸失利益

もご参照ください。

4 いつまでの収入について逸失利益が認められるか

労働能力喪失期間は通常は67歳までとなります。

67歳を超える被害者については、その被害者の平均余命の半分について労働能力喪失を認めるのが一般的です。

高齢になっても継続することが多い業種については67歳以降まで労働能力喪失が認められることがあります。

なお、頚椎捻挫(むち打ち)については、12級で10年、14級で5年程度に労働能力喪失期間が限定される傾向があります。

頸椎捻挫以外の12級、14級ケースでも労働能力が同様に制限される場合があります。

この点、「近時の裁判例における、むち打ち症ではない局部の神経症状(14級、12級)に関する労働能力喪失期間の認定傾向」(東京弁護士会西部俊宏弁護士、交通事故相談ニュースNO46所収)は、むちうち以外の12級、14級事例について、

・症状固定後相当期間が経過しているのに症状が改善しない場合には労働能力喪失期間は制限されにくい

・脳・脊髄損傷ケースでは労働能力喪失期間は制限されにくい

・12級については、運動・機能障害がある場合について労働能力喪失期間は制限されにくい

・高齢者(50代、60代以上)は労働能力喪失期間は制限されにくい

としており、参考になります。

12級の場合の労働能力喪失期間

14級の場合の労働能力喪失期間

後遺障害のある被害者が死亡したときの逸失利益もご参照ください。

5 定期金賠償

後遺障害の逸失利益については、一括での支払いではなく、将来にわたり定期的に賠償金を払い続ける定期金賠償もありうるとされています(最高裁令和2年7月9日判決)。

6 弁護士費用

交渉・訴訟とも着手金無料(ただし、特に困難な事件については5・5~33万円、弁護士特約に加入している場合にはその基準上の金額をいただくことがあります)

種類 支払い時期 基準
相談料 相談時 無料
着手金 受任時 交渉・訴訟とも着手金無料(ただし、特に困難な事件については5・5~33万円、弁護士特約に加入している場合にはその基準上の金額をいただくことがあります)
報酬金 解決後 増額分の13・2%(3,000万円を越える総額については9・9%)
加害者・保険会社側からの提示がない段階で受任した場合には、得られた金額の6・6%(回収金額の3,000万円を越える部分については5・5%)
保険会社からの提案がない段階で受任し、保険会社から1000万円入金があった場合、報酬66万円をいただきます。保険会社から50万円の提案があり、その後受任し、最終的に950万円入金があった場合、950万円-50万円=900万円の13・2%である118万8000円を報酬としていただきます。

7 新潟で交通事故のご相談は弁護士齋藤裕へ

交通事故でお悩みの方は弁護士齋藤裕にご相談ください。
まずはお電話(025-211-4854)か、メールでご連絡ください。

交通事故についての一般的な記事

弁護士費用はこちらの記事

もご参照ください。

さいとうゆたか法律事務所トップはこちらです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です