
1 労災と元請の損害賠償責任
元請の安全配慮義務と条文
労働災害が発生した場合、元請が賠償責任を負うことは稀ではありません。
元請と労働者との間には直接の契約関係はありません。
しかし、労働者安全衛生法は、以下のとおり定めます。
特に建設現場での労働災害については、末端の下請、孫請事業者には資力がなく、十分な賠償をなしえない場合もあります。
そのような場合には、元請事業者が労働者安全衛生法を遵守しているかどうかしっかり確認し、元請に対する賠償請求も検討しなければなりません。
元請の安全配慮義務と裁判例
例えば、山口地裁下関支部令和4年2月25日判決は、
「安全配慮義務は,ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において,当該法律関係の附随義務として当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則上負う義務として認められるものである(最高裁判所昭和50年2月25日第3小法廷判決・民集29巻2号143頁参照)。そして,元請企業と下請会社等の従業員の関係のように直接の契約関係がない場合であっても,ある法律関係に基づき,信義則上の義務を肯定するに足りる特別な社会的接触の関係に入ったときには,元請企業は,下請会社等の従業員等に対しても,安全配慮義務を負う。」
「そして,労務関係に起因する安全配慮義務は,その労務等の遂行に当たって支配管理する人的及び物的環境から生じ得べき危険の防止について信義則上負担する義務を内容とするものといえるから,元請企業と下請会社等の従業員が特別な社会的接触の関係に入っているとしてこれを認めるためには,元請企業が下請労働者に対し作業の遂行に関する指示その他の管理を行うことにより,人的側面について支配を及ぼしていること,また,作業の場所の決定,作業の処理に要する機械,設備,材料,資材などの調達を下請会社等が行わず,元請企業が下請労働者の作業環境を決定するなどして,物的側面について支配を及ぼしていることを要するというべきである。」
とした上で、当該事案において、元請に賠償責任を認めているところです。
2 新潟で労災のお悩みは弁護士齋藤裕にご相談ください
もご参照ください。
労災でお悩みの方は当さいとうゆたか法律事務所の弁護士(新潟県弁護士会所属)にお気軽にご相談ください。
さいとうゆたか法律事務所トップはこちらです。