後遺障害等級1級の場合の慰謝料(交通事故)

交通事故

1 後遺障害等級1級の場合の慰謝料

交通事故で後遺障害等級1級が認定された場合の慰謝料について、赤本では2800万円が基本とされています。

しかし、実際には、近親者の慰謝料も含めたとき、それをかなり上回ることがあります。

例えば、東京地裁平成15年8月28日判決は、以下のとおり述べて、後遺障害にかかる慰謝料計4000万円を認定しています。

 

○原告春子は、本件事故当時、二一歳の独身女性であり、何ら落ち度がないにもかかわらず、若くして高次脳機能障害、左片麻痺、右眼喪失等の極めて重大な後遺障害を負い、生涯にわたり常時介護を要するに至ったこと、頭蓋骨が陥没し外貌についても著しい醜状が残ったこと、現在でもなお服薬を怠れば脳痙攣を起こして死亡する危険性を有していること等を総合考慮し、後遺障害慰謝料は三二〇〇万円を相当と認める。

○原告両親の唯一の子である原告春子は、前記のように、本件事故によって、生死の境をさまよったばかりでなく、若くして、高次脳機能障害、左片麻痺、右眼喪失、著しい外貌醜状等の重大な障害を負った上、現在でもなお死亡する危険性を有しており、原告春子の受傷による原告両親の精神的苦痛は察するに余りある。また、原告両親は、自ら営んでいたクリーニングの取次店を実質的に廃業して、原告春子の介護に当たっており、今後とも、本件事故がなければ享受できたであろう自分自身の生活上の歓びを犠牲にして、原告春子の介護につき老齢に至るまで中心的役割を担わざるを得ない。そして、原告両親は、原告春子が指示に従わなかったり、従ってもなかなかそれを実行に移せないのを見て、原告春子を叱咤し、時には叩くなどの行為に及び、その後で自らを責めるようなことを繰り返し、その度に本件事故のことを思い出さざるを得ないという状況にあるが、このことからも推察されるように、介護による原告両親の精神的負担も極めて重い。以上を総合すれば、原告両親は、原告春子の死亡にも比肩すべき精神的苦痛を被ったものというべきであり、原告両親の固有の慰謝料として各四〇〇万円を認めるのが相当である。

このように症状の程度、年齢、被害者側の落ち度の有無、関係者の思いなどが考慮されていることが分かります。

単に後遺障害等級だけではなく、被害の実態に迫った立証をし、適正な慰謝料額を認定させることが重要です。

なお、高齢者については、2800万円を下回る慰謝料額となることもあります。

例えば、福島地裁平成30年9月11日判決は、以下のとおり述べ、78歳の被害者が1級の後遺障害を負った事案において、慰謝料額を2000万円としました。

原告は,本件事故により身体障害者等級1級に相当する後遺障害を負っているものの,原告が78歳であり,平均余命が13.21年(平成26年簡易生命表・女・78歳)であること及びその他諸般の事情を考慮すれば,後遺障害慰謝料は2000万円と認めるのが相当である。

また、高松高裁平成29年11月8日判決も、64歳の被害者の後遺障害慰謝料を2500万円としています。

しかし、高齢者については逸失利益が必然的に低くなります。さらに慰謝料も大幅減額することは著しく高齢者以外とのバランスを失することになります。高齢者についても、慰謝料については最低限2800万円の支払を求めることを基本的姿勢とすべきでしょう。

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