
報道によると、千葉県野田市の虐待事件に関して、女児の父親が、教育委員会から、女児が虐待について書いたアンケートを開示したとのことです。
これが野田市個人情報保護条例に基づき開示がされたケースかどうかは分かりませんが、同条例に即して問題を検討します。
野田市個人情報保護条例は、「第15条 何人も、この条例の定めるところにより、実施機関に対し、当該実施機関の保有する自己に関する個人情報(指定管理者に公の施設の管理を行わせるときは、当該管理の業務に関するものを含む。)の開示を請求することができる。2 未成年者若しくは成年被後見人の法定代理人又は本人の委任による代理人(以下「代理人」という。)は、本人に代わって前項の規定による開示を請求することができる。」としています。
ですから、未成年者の親が法定代理人として未成年者の個人情報を取得すること自体は可能です。
しかし、野田市個人情報保護条例は、「(開示しないことができる個人情報) 第17条 実施機関は、本人開示請求に係る個人情報が次の各号に掲げる事由(以下「不開示事由」という。)のいずれかに該当するときは、当該個人情報を開示しないことができる。(5) 未成年者の代理人により本人開示請求が行われた場合であって、開示することが当該未成年者の利益に反すると認めるとき。」と定めているところです。
今回問題となったアンケートは、女児が父親による虐待について記載したものです。
それが父親に開示された場合、報復など、女児の不利益となる可能性があることは明白です。
報道では女児の同意書が提出されたとのことです。
しかし、虐待されている立場の女児が真意から開示に同意していたとは到底思われません。
同意書があったとしても野田市教育委員会の対応がまずかったと評価するほかありません。
それにも関わらず、女児の父親にアンケートを開示した野田市教育委員会の対応は野田市個人情報保護条例の趣旨に反していたといわなくてはなりません。
未成年者が法定代理人についてネガティブなことを記載しているような客観的に未成年者の利益に反することが明らかな個人情報については、同意の有無に関わりなく、原則として法定代理人による開示を認めないという取扱いが望ましいと考えます。
なお、未成年者の利益に反する開示は認めないというタイプの条例は全国に多くあります。
全国の自治体において今回の件を教訓として厳格な解釈をすることが求められます。