
1 単身赴任と婚姻関係破綻(不貞、不倫の慰謝料)
夫婦の一方が、他の人と性的関係を持った場合には、不貞とされ、慰謝料が発生します。
しかし、夫婦が長年月別居している場合、婚姻関係が破綻しているとされ、夫婦の一方が他の人と性的関係を持っても不貞とはされないことがあります。
そこで、どのような場合に別居や婚姻関係破綻といえるかが問題ですが、特に単身赴任の場合には判断が難しい場合があります。
夫が単身赴任中に、別の女性と性的関係を持った事件に関する東京地裁平成30年1月29日判決は、以下のとおり述べて、単身赴任が長くなっても婚姻関係が破綻しているとは言えないとしました。
「原告とAは,平成27年10月22日に原告がAの浮気を疑うメールを送信するまでは,原告が単身赴任や子育てについてのAに対する不満や苛立ちが高じて離婚に言及するなどの夫婦喧嘩が少なからずあったものの,実際に離婚に向けた話合いが行われて何らかの合意に至ったとの事情は認められず,かえって,間もなく従前どおりのメールのやり取りに戻り,平成26年には長女も誕生して,Aが山梨に赴いた際には子らを中心として家族の交流が保たれ,家計の管理方法についても変更がなかったことが認められるから,原告とAの婚姻関係が平成27年10月時点で既に破綻していたとの事実は認められないというべきである。また,原告とAは,仕事の都合によりAが単身赴任することに合意した上で婚姻関係を継続していたのであり,同居期間が約6か月間にすぎないことは夫婦関係の悪化を示すものとはいえないし,原告がAの単身赴任先を数回しか訪問しなかった点も,小さい子を同行することが困難との事情を考慮すれば,夫婦関係の悪化の兆候とは認めることができず」
また、
・東京地裁令和2年1月23日判決は、「妻と夫は,夫が単身赴任を開始(平成29年4月)してから平成31年2月まで,互いに連絡を取り合い,札幌や東京で会っていたことからすれば,妻及び夫の婚姻関係において,夫と不貞相手との不貞関係前に,離婚に発展するような問題はなかったと認められる。」、東京地裁平成29年12月12日判決は、「Aは,同年,香港に単身赴任したが,原告及び子供らはAを訪問して観光するなどしていたこと,Aが帰国した後も,原告との連絡や子供との交流状況に特段変化はなかったことなどを認めることができる。そうすると,Aと被告が不貞関係を持つに至ったときに原告とAの婚姻関係が破綻していたと評価することはできない。」として、単身赴任中の夫婦間の交流を理由に婚姻関係破綻を否認し、
・東京地裁令和1年6月28日判決は、「夫が、単身赴任を口実に妻に居所を教えることなく生活するようになった」ことなどを理由に婚姻関係の破綻を認定しています。
このように、夫婦間の交流、離婚についての話がどの程度のレベルでされていたか、家計管理方法の変化などを考慮して婚姻関係の破綻の有無を判断していることが分かります。
単身赴任中の不貞については、このような判断要素で破綻の有無が判断されるのが通常かと思われます。
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