何年別居すると婚姻関係が破綻したと言えるのか(離婚、不貞)

離婚問題

執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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1 何年別居すると婚姻関係が破綻したと言えるのか

婚姻関係の破綻を認定する意味

離婚について合意がない場合、一方当事者が離婚調停後に離婚訴訟で離婚を認めてもらうためには離婚理由が必要です。

別居が長期間にわたったことによる婚姻関係の破綻はその離婚理由の代表的なものです。

また、誰かと結婚している人が他の人と性行為をすれば不貞とされ、慰謝料が発生します。

しかし、形式上は結婚していても、婚姻関係が破綻している場合、それ以降に性行為があっても不貞とはされず、慰謝料は発生しません(最高裁平成8年3月26日判決)。参照:婚姻関係破綻の場合には不貞慰謝料が発生しないとした判例

ですから、どのような場合に婚姻関係が破綻したと言えるのか、どの程度の期間別居すれば婚姻関係が破綻したと言えるのかが問題です。

婚姻後の同居期間が短ければ2年も別居していなくても婚姻関係破綻とされる可能性はあります。

他方、同居期間が長ければ、3年程度別居していても婚姻関係は破綻していないとされる可能性があります。

別居5年以上で婚姻関係破綻を認めた裁判例

東京地裁平成16年7月14日判決は、5年以上の別居の事案で、

・その間の交渉は単発的なものに過ぎず,それ以前から数年以上原告と被告間に性的交渉はなかったこと

・原告が強く離婚を望んでいること,

・被告も原告と共同生活を営んでいく意思がなく,離婚に応じないのは貸金の返還と慰謝料の支払を受けるためだけであること

からすると,既に,夫婦間の婚姻関係破綻しているとしました。

3年程度の別居では婚姻関係の破綻を認めなかった裁判例

不貞による慰謝料請求の前提として婚姻関係の破綻の有無が問題となった事例についての東京地裁平成30年1月23日判決は、以下の事情のもとで、3年程度の別居があっても婚姻関係は破綻していないとしました。

・別居期間は,平成25年2月から平成27年12月まで2年11か月

・婚姻届出後の同居期間は平成14年10月から平成25年1月まで10年4か月

・当事者間の価値観の相違が婚姻生活において必ずしも顕在化する状況ではなかった

・別居後も当事者間で,定期的にメールのやり取りが続いており,一方が婚姻関係の修復のための努力を払っていたこと

・不貞をした側の配偶者において、離婚協議書の送付,離婚届の直接の交付,夫婦関係調整調停の申立てをし、離婚に向けた働きかけを次第に強めており,婚姻関係の継続に向けた意思が乏しかった

2年半の別居では婚姻関係が破綻していないとされた裁判例

東京地裁平成27年2月3日判決は、以下の事情のもとで、別居後2年半でも婚姻関係は破綻していないとしました。

・夫婦は二年半以上にわたり別居状態にあった

・一方から他方に対する生活費の給付は継続して行われていた

・いずれの当事者も婚姻関係を解消するための手続をとっていなかった

2年強の別居で婚姻関係破綻を認めた裁判例

東京地裁平成16年1月16日判決は、2年強の別居期間の事案において、

・同居期間は10年以上

・2人の未成年の子

・深刻な性格の不一致

・復縁に向けた努力がなされていない

等の事情を踏まえ、婚姻関係が破綻しているとしました。

長期間別居で離婚が認められるかどうかを左右する事情

以上より、長期間別居で婚姻関係破綻が認められるかどうかについては、

・別居前の同居期間

・夫婦関係復縁への努力

・離婚に向けた手続き

・同居中の夫婦関係

等の事情が大きく影響することがわかります。

2 家庭内別居と婚姻関係破綻

裁判等では、家庭内別居が長引いていたから婚姻関係が破綻していたと主張されることが多くあります。

しかし、そのような主張が認められることはまれです。

同居しているものの家事も別で顔も合わせないような極限的な場合等において例外的に家庭内別居による婚姻関係破綻が認められるだけです。

同居しつつ家庭内別居として婚姻関係破綻が認められた事例としては、東京地裁令和1年6月28日判決があります。

同判決は、夫婦が同居しつつ、双方の不貞を事実上容認していたこと、離婚調停が不調となったものの離婚については同意があったことなどを踏まえ、家庭内別居による婚姻関係破綻を認めています。

3 単身赴任による別居と婚姻関係破綻

単身赴任による別居は通常は婚姻関係破綻を裏付けません。

しかし、単身赴任中の生活費の負担のあり方、夫婦の交流のあり方など次第では婚姻関係破綻が認められることもあります。

東京地裁平成16年11月17日判決は、単身赴任に端を発した2年半の別居について、

別居は,当事者の納得に基づくものではなく,主として長男の養育に関する考え方の相違に原因があること

別居後,被告の借金が判明したが,その原因の解消方策,借金の返済計画等について,原被告間で話し合いが十分に行われないまま,被告からの婚姻費用分担の調停が申し立てられたこと

・その後,原被告間で夫婦関係の改善についての試みも窺われないこと

から、夫婦間の婚姻関係破綻しているものと判断されました。

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