退職金と財産分与

離婚問題

1 退職金と財産分与

離婚時点で一方配偶者が退職をしていない場合でも、その退職金が財産分与の対象となることがありえます。

例えば、東京家裁平成28年3月30日決定は、以下のとおり述べ、退職金を財産分与の対象としています。

「本件記録(甲25)によれば,申立人が勤務している■■■を本件基準時において自己都合退職した場合の退職金の金額は818万0400円であるところ,申立人は,平成4年■月■日から同会社に勤務しており,本件基準時までの在籍日数は,5950日となる。」
「他方,申立人および相手方の婚姻期間は平成7年■月■■日から平成20年■月■■日までの4782日であるから,上記退職金のうち,分与対象財産となるのは,以下のとおり,657万4567円(1円未満四捨五入)とするのが相当である。」
「818万0400円×4782日/5950日=657万4567円」

 

つまり、基準時における退職金額×婚姻期間/在職期間を分与の対象としているわけです。

ところで、退職金は現に支払われていないわけですが、その段階でも退職金についての財産分与としてお金を払わないといけないかどうか問題となります。

東京家裁平成28年3月30日決定は、特に期限や条件をつけないで支払いを命じています。

他方、東京家裁平成22年6月23日決定は、以下のとおり、退職金支給を条件とした分与を命じています。

「相手方は,申立人に対し,相手方が○○信用金庫から退職金を支給されたときは,399万4379円を支払え。」

分与をする側からすると、実際に退職金が支給されていないのに退職金について分与を命じられるのは不当だと感じられるかもしれません。

他方、退職金支給時を条件とした場合、分与を受ける側が実際に分与を受けることができるかどうか不確実性が残ると言えます。

さらに、基準となる退職金額について、基準時点での退職金額ではなく、実際の支給金額を基準とするとの考えもあります。

この点、大阪高裁平成19年1月23日判決は以下のとおり述べます。

 「中小企業金融公庫の退職手当については,その支給は,ほぼ確実であるものの,金額について現時点で確定的な予測をすることは困難である。
 したがって,別紙1「退職手当財産分与計算式」記載の退職手当財産分与額のとおり,実際の支給額(手取額)から,控訴人の寄与割合に相当する割合を定めて支払を命ずるのが相当である。」

これも、実際に支給されるわけでもない別居時など基準時点での退職金額を基準にするのはおかしいという考え方正当化されるでしょうが、解決が先延ばしになるという欠点があります。

このように、退職金の財産分与の仕方については色々な方法があり、定説がないというのが現状となっています。

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