
1 LINEやメールでのやりとりが不貞・不倫になるか
不貞・不倫とは、婚姻関係にある人が配偶者以外の人と性行為を行うことを指すと解釈するのが一般です。
ですから、SNSやメール、電話で卑猥なやりとりをしても不貞・不倫には該当しませんし、損害賠償の対象とはならないことが大原則です。
しかし、東京地裁平成29年9月26日判決は、LINEでのやりとりが不貞に準ずるものだとして、損害賠償を命じています。
同判決は、以下のとおり述べます。
「被告Y1が,Aとの間で,平成27年2月26日から翌日にかけて,LINEで別紙記載の内容を含むやり取りをしたことは争いがなく,その前後の部分(甲2の1)も併せてみると,やり取り①は,その内容からして,被告Y1とAが,従前,性的関係を有していたことを前提として,性的行為の内容を露骨に記載して性交渉を求めるものであり,やり取り②は,前日のやり取り①も踏まえると,被告Y1が,Aに対し,性交渉を求めるものであると認められる。
そして,上記のように,従前,性的関係を有していたことを前提として,性的行為の内容を露骨に記載して性交渉を求めることは,不貞行為には該当しないものの,その記載内容にも照らすと,これに準ずるものとして,社会的に許容される範囲を逸脱するものといえ,婚姻関係の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害するものであるというべきであるから,被告Y1の上記行為は,原告に対する不法行為を構成すると認められる。」
つまり、以前、被告と原告の配偶者が性的関係を持ってきたことを前提に、性的行為の内容を露骨に記載して性交渉を求める行為については不貞に準ずるものであり、損害賠償の対象となるとしています(不貞行為そのものではないこと、密行的に行われるものであることから、30万円の慰謝料が認められています)。
他方、以前性行為がなかった被告との関係では、恋愛感情を示したり、面会を求めるメールについて不貞に準ずるものとはされませんでした。
ここからすると、ⅰ 以前性的関係があった者同士のメールであること、ⅱ それを踏まえ、露骨に性的関係を求めるメールであること、の2要件を満たす場合には、不貞に準ずるという判断がなされる可能性があるということになります。
しかし、ⅰとⅱのどちらかだけである場合にどのような判断がなされるのか、不明な点が残るといえるでしょう。
2 LINEやメールだけで不貞が認定されるか?
それでは、LINEやメール自体を不貞とは言えないとして、LINEやメールだけで性行為=不貞を推認させる証拠となるでしょうか?
この点、東京地裁令和3年1月27日判決は、メール上において、渋谷で会う約束をしていた、「心から愛し合って」、「いとおしく思っている」等のやりとりをしていた事例において、メールから親密な関係にあったこと、会うこともあったことまでは認定できても、不貞関係までは認定できないとしています。
例えば、メールに性行為をしたことが記載されていれば、メールだけから不貞が認定される場合はあるでしょう。
あるいは、メールで親密な関係があることが推認され、かつ、2人がアパートの一室などで数時間過ごしていた事実が認められるのであれば、やはり不貞が認定される場合はあるでしょう。
しかし、メールだけで不貞が認定されるケースはさほど多くはないと考えられます。
3 新潟で不倫・不貞のお悩みは弁護士齋藤裕へ
もご参照ください。
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