プレス機械での事故と労働災害(労災)

交通事故

1 プレス機での事故と労災

プレス機での労災は比較的多く発生するものです。

労安衛則は以下のとおりプレス機について労災防止のための義務をもうけています。

第百三十一条 安全囲いを設ける等当該プレス等を用いて作業を行う労働者の身体の一部が危険限界に入らないような措置を講じなければならない。それが困難な場合でも適切な安全装置を設けなければならない。
第百三十一条の二 動力プレスの金型の取付け、取外し又は調整の作業を行う場合において、当該作業に従事する労働者の身体の一部が危険限界に入るときは、スライドが不意に下降することによる労働者の危険を防止するため、当該作業に従事する労働者に安全ブロツクを使用させる等の措置を講じさせなければならない。
第百三十一条の三 事業者は、プレス機械の金型の調整のためスライドを作動させるときは、寸動機構を有するものにあつては寸動により、寸動機構を有するもの以外のものにあつては手回しにより行わなければならない。
第百三十二条 事業者は、プレス等のクラツチ、ブレーキその他制御のために必要な部分の機能を常に有効な状態に保持しなければならない。
第百三十三条 事業者は、令第六条第七号の作業については、プレス機械作業主任者技能講習を修了した者のうちから、プレス機械作業主任者を選任しなければならない。

第百三十四条 事業者は、プレス機械作業主任者に、安全装置点検、安全装置異常時の適切な措置などを行なわせなければならない。

第百三十四条の三 事業者は、動力プレスについては、一年以内ごとに一回、定期に、自主検査を行わなければならない。
第百三十五条 事業者は、動力により駆動されるシヤーについては、一年以内ごとに一回、定期に、自主検査を行わなければならない。を行つた年月を明らかにすることができる検査標章をはり付けなければならない。
第百三十六条 事業者は、プレス等を用いて作業を行うときには、その日の作業を開始する前に、点検を行わなければならない。
第百三十七条 事業者は、自主検査又は点検を行つた場合において、異常を認めたときは、補修その他の必要な措置を講じなければならない。

これらの義務に違反した場合、使用者が安全配慮義務に違反したものとして損害賠償を命じられる可能性があります。

2 プレス機での労災と裁判例

最近の事例としては、平成28年4月28日判決があります。

これは、プレス作業中、不良品を取り除こうとして、手をプレス機に挟まれたという労災事故についてのものです。

同事故において、被災労働者は自ら安全装置を解除しており、それが事故の発生原因となっています。

判決は、以下のとおり述べ、安全配慮義務違反を認定しています。

本件各プレス機には,安全囲い等は設けられておらず,安全装置が備え付けられているものの,安全装置を不作動にすることができ,かつ,そのための切替えキーは,本件各プレス機に取り付けられていたため,被告の従業員によって自由に操作することができたこと,事業主はプレス機械作業主任者を選任して,安全装置の切替えキーを保管させる義務があるが,少なくとも被告では,プレス機械作業主任者が安全装置の切替えキーを保管する状況にはなかったこと,本件第一事故については,安全装置を不作動にすることを了承したことは上記のとおりである。
そうすると,安全装置の切替えスイッチが切り替えられたいかなる状態でも,作業を行う労働者の安全を確保することができる措置が講じられていたとはいえないうえ,プレス機械作業主任者をして安全装置の切替えキーを保管させることもなかったから,被告は,規則131条及び134条に違反していたと認められる。
また,法が定める措置は労働災害の防止のための最低基準であり,使用者は,当該作業の内容や危険性等に応じて,労働災害の発生を防止するための適切な措置を取ることが求められているというべきところ,被告が従業員に適切な安全教育をしたとは認められず,安全装置の切替えキーを本件各プレス機に挿したままとし,安全装置を不作動にしたまま作業をすることも容認していたことは上記のとおりであるから,労働災害の発生を防止するための適切な措置を取ったともいえない。
そうすると,被告は,本件各事故の時点において安全配慮義務に違反しており,また,これらの措置が適切に取られていれば,本件各事故は発生しなかったと認められるから,被告の安全配慮義務違反と本件各事故の発生には相当因果関係がある。

このように、被災労働者は自ら安全装置を解除していましたが、使用者においてそれを可能とする状況をつくっていたことから、安全配慮義務違反を認定したのです。

プレス機での事故に限りませんが、使用者としては労働者が安全ではない作業方法を取ったというだけでは免責されず、事故が起こらないよう最大限の措置を取ることが求められるのです。

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