
1 症状固定後の治療費
症状固定とは、治療を行っても症状が改善しない状態を言います。
ですから、症状固定後については治療は必要がないとされるのが一般的であり、賠償が認められないことが多いです。
しかし、実際には、症状固定後も治療を行う必要がある場合もあり、症状固定後の治療費を賠償対象として認める裁判例も多くあります。
頚部捻挫(12級)に関する神戸地裁平成10年10月8日判決は、「ほぼ症状が固定したと窺われる平成六年四月以降の分を含んではいるが、改善は期待できないまでも、保存的治療としては必要であったと推定されるから、本件事故と因果関係があるものと認める。」として、保存的治療としての意味があるとして症状固定後の治療費を賠償対象としました。
また、遷延性意識障害など(1級)に関する神戸地裁平成29年3月30日判決は、以下のとおり述べ、症状固定後の治療費を認めています。
「被告らは,藤田保健衛生大学病院における脊髄後索電気刺激療法の症状改善への効果には疑問があるため,上記治療は,本件事故との相当因果関係を欠くと主張する。被告ら提出の意見書(乙58)によれば,遷延性意識障害の患者の首の骨の中に電極を埋め込んで,電源から弱い電流を流して脳を刺激する治療法である脊髄後索電気刺激療法(甲41,94)は保険診療で認められた治療法ではなく,意識障害の患者に対する有効性も十分に実証されていない。しかし,原告X1に対する施術は,藤田保健衛生大学病院の医師の医学的判断を経て行われたものである上,退院時には覚醒状態に明らかな改善があると評価されている(乙56の1〈8,1558頁〉)など,一定の効果があったとうかがえることなどに鑑みると,本件においては,その必要性及び相当性を肯定することができ,被告らの上記主張は採用できない。」
「また,証拠(乙57)及び弁論の全趣旨によれば,兵庫県立リハビリテーション中央病院の入院においては,在宅環境整備,介護指導,理学療法などが行われたと認められ,在宅介護への移行準備としての入院治療の必要性及び相当性が認められる。」
ここでは、覚醒状態に改善があったことが理由の一つとされています。
そうだとすると、そもそも症状固定していたのかという疑問があり、症状固定後の治療費を認める裁判例として位置づけてよいのかどうか疑問もあります。
他方、症状固定後の入院中に在宅環境整備、介護指導、理学療法が行われたことも理由とされています。
症状固定後もこれらがなされた場合には治療費が認められやすいということは導き出せるように思います。
いずれにしても、様々な理由で症状固定後の治療費が賠償対象となることがあるので、症状固定後の治療費であるいうだけで請求を諦める必要はないということになります。
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