近親者の入院付添費・付添看護費・通院付添費について(交通事故)

交通事故

執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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目次

1  近親者の入院付添費・付添看護費について(交通事故)

2 近親者が付添した場合に休業損害額の賠償が認められる場合

3 どのような場合に通院付添費が賠償されるか?

4 新潟で交通事故のご相談は弁護士齋藤裕へ

 

1  近親者の入院付添費・付添看護費について(交通事故)

交通事故で入院した場合、近親者の入院付添費・付添看護費が概ね一日あたり6500円認められることがあります。

完全看護病院が多く、入院付添費・付添看護費は常に認められるわけではありません。

医師の指示があるとき、傷害の程度が重いとき、被害者が幼いとき、被害者の精神状態が安定しない場合などには入院付添費・付添看護費が認められやすいです。

親族の付添看護費を認めた裁判例

例えば、仙台地裁平成30年10月18日判決(この判決自体は山岳遭難に関するものです)は、以下のとおり傷害や治療の状況などから付添看護費を認めています。

「原告の妻は,原告の入院中少なくとも34日付き添った事実が認められるところ,原告が雪崩に巻き込まれて遭難し,左下腿骨骨折,左橈骨骨幹部骨折,第12胸椎圧迫骨折の傷害を負い,住居地と離れた青森市内の病院にも長期間入院し,3度の手術を受けた経過に照らすと,原告の妻による上記の付添の必要伴及び相当性が認められる。そうすると,付添看護費は合計22万1000円(日額6500円×34日)と認められる。」

また、広島地裁福山支部令和5年3月8日判決は、10歳の被害者が頭蓋骨骨折、外傷性くも膜下出血、気脳症で入院していた事例において、被害者の実母が10日間の入院期間中、毎日付添をしていたことについて、「被害者の傷害の内容・程度に加え、本件事故当時の年齢(10歳)に照らせば、同期間において近親者による付添看護の必要性があったといえ、その付添費用は、入院の全期間(10日間)を通じて1日当たり7000円と認めるのが相当である。」として1日7000円の付添看護費を認めました。

大阪地裁令和5年2月27日判決は、「父母らは、本件事故当日、本件事故により被害者が受傷した旨の連絡を受け、それぞれ大阪赤十字病院に駆けつけたところ、大阪赤十字病院の医師から、被害者は心停止の状態が続いており、心肺蘇生法を続けているが、心臓が再拍動する気配がないと告げられ、その後、父母らCは、被害者の死亡確認に立ち会った」、「以上の事実によれば、被害者が本件事故により重篤な状態に陥り、父母らが直ちに病院に向かい、付き添う必要があったと認められ、父母それぞれにつき6000円の付添看護費は本件事故による損害と認められる。」としています。

京都地裁平成29年10月31日判決は、10歳児が被害者のケースで、重大な事故で、PTSDの可能性もあったなどとして1日6500円の入院付添費を認めました。参照:10歳児について入院付添費を認めた裁判例

付添看護費を減額させた裁判例

なお、付添看護の必要性が高ければ入院付添費・付添看護費日額はあがる可能性はありますし、低ければ下がる可能性もあります。

例えば、大阪地裁平成31年1月30日判決は、以下のとおり述べ、付添看護の必要性に応じて入院付添費日額が減るものとしています。

「原告X1が入院していたB医療センター及びC病院は,いずれも完全看護の態勢を採っていると考えられるものの,原告X1の症状の程度,B医療センター医師が付添いの必要性があったとしていること,原告X2又は同X3による親族としての情愛に基づく入院付添費も一定範囲では損害と認められるべきこと,他方で,C病院における入院は,リハビリテーションを目的とするものであり,その入院中に原告X1の症状は徐々に改善しているのであって,必要な付添いの程度も変わっていったと考えられることなどを考慮すると,入院付添費としては,B医療センターの39日については日額6000円(=39日×6000円=23万4000円),C病院の399日(入院400日からB医療センターの入院日と重複する1日を控除)については平均して日額4000円(399日×4000円=159万6000円)の限度で,必要かつ相当と認める。」

このように入院付添費・付添看護費については、自動的に認められるものでもないので、その必要性を適切に主張立証することが必要なのです。

2 近親者が付添した場合に休業損害額の賠償が認められる場合

交通事故の被害者が入院し、近親者が付添看護をする場合、1日6500円を目安として付添看護費が認められることが多いです。

この金額については、近親者が付添看護をすることにより休業したとして、休業損害額とする場合もあります。

神戸地裁平成28年1月18日判決は、以下のとおり述べて、付添看護をした親族の休業損害額1日1万6462円~2万3905円、公休日については1日6000円を認めています。

「原告X1については,上記①認定の年収額600万8851円を365日で除した日額1万6462円を,Bについては,上記①認定の年収額872万5469円を365日で除した日額2万3905円を,公休日については,近親者の入院付添の定額である日額6000円を認めるのが相当である。したがって,付添看護費用等は,(ア)原告X1 23万0468円(日額1万6462円×有給休暇取得日数14日),(イ)B35万8575円(日額2万3905円×有給休暇取得日数15日),(ウ)公休日28万2000円(日額6000円×47日)の合計87万1043円が認められる。」

福岡地裁平成25年7月4日判決は、以下のとおり述べ、親族の年収から導かれる1日あたりの収入より少し低い額を付添看護費としています。

「その日額は、原告松夫の平成一七年の給与収入が四六六万五〇〇〇円であったこと等に照らし、一万円と認める。」

大阪地裁平成23年4月25日判決は、以下のとおり述べ、一日あたりの付添看護費用を算定するのではなく、付添看護で失われた収入全体をそのまま付添看護費として認めています。

「上記認定のとおり,原告は,本件事故により,脳挫傷,右急性硬膜下血腫,頭蓋底骨折及び後頭骨骨折等の傷害を負い,本件事故後は,一貫して入院治療を継続しているところ,路線バスの運転手をしていた成年後見人Bは,平成17年3月2日から同年6月6日までの間,65日間仕事を休み,3日間の有給休暇を取得して,原告が入院する病院に連日通ったこと,そのために同人は,127万2794円の給与の支払を受けられず,8万5117円の賞与の減額を受けた事実が認められる。
以上によれば,原告の症状に鑑み,付添看護の必要性を認めることができるから,成年後見人Bが受領することができなかった給与及び賞与の合計額である135万7911円は,近親者付添看護費として認めるのが相当である。」

このように裁判例においては、年収ベースの付添看護費を認める事例が少なくありません。

1日6500円より高くなることが見込まれる場合には、年収ベースの付添看護費を請求することも検討されるべきです。

3 どのような場合に通院付添費が賠償されるか?

交通事故で傷害を負い、入院した場合、親族の付添看護費が認められることがあります。

通院の場合にも親族の付添看護費が認められることがあります。

これは、被害者の症状が重く1人では通院できない場合、被害者が幼い場合等に認められます。

幼児と通院付添費

東京地裁平成8年12月10日判決は、以下のとおり述べて、4歳児の通院に付添い、親が休業した件について、通院付添費用1日1万円を認めました。

高次脳機能障害と通院付添費

大阪地裁令和4年11月18日判決は、「被害者が高次脳機能障害等の症状により、症状固定日時点でも外出に介護(看視)を必要とする状態であったとされていることのほか、被害者の母親が実際に通院に付き添っているというから、付添交通費の損害を認めることとする。したがって、通院48日につき1日あたり3000円の計算により、14万4000円の通院付添費を原告Fの損害として認める。」として高次脳機能障害の被害者について1日3000円の通院付添費を認めました。

名古屋地裁平成27年1月14日判決は、以下のとおり述べ、高次脳機能障害などの影響で単独で公共交通機関を使うことが困難な被害者について、通院付添看護費を認めています。

「原告は,高次脳機能障害のため,木村病院退院当初,複視,歩行不安定,コミュニケーション障害,注意障害,遂行機能障害,社会的行動障害等が残存し,食事や衣服脱着に声かけや事前準備を要するものの,排泄や屋内平地歩行等は一応自立していた。複視等の影響で公共交通機関の単独利用は困難であり,屋外歩行も見守りや手引きを要し,通院付添看護は必要であったといえる。また,家庭内において常時介護を必要とするものではないが,夫に対する依存度は相当に高く,随時介護の範疇において比較的密接なケアを必要としているものと認める。そこで,退院後症状固定日までの家族介護・通院付添看護費として日額6000円を認める(6000円×583日=349万8000円)。」

足の骨折と通院付添費

名古屋地裁令和4年7月20日判決は、

ⅰ 令和1年5月8日まで、被害者が医師から、松葉杖を使用することを指示されていたこと

ⅱ 同日以後は、松葉杖を使わなくてもよい旨告げられ、患部へ全荷重をした歩行が許可されたこと、

しかし、強く踏み込んだり走ったりすることは禁止されていたこと、同日時点では、まだ骨癒合に

は至っていなかったこと、原告が、その後、同年8月頃まで、痛みの程度に応じて松葉杖を使ってい

たこと被害者は、遅くとも同年7月10日及び同月12日には、自動車を運転していたが、運転後は

右足の痛みを感じていたこと
を前提に、

ⅰ 被害者は、同年5月8日までは、自ら自動車を運転することが困難であり、通院のために付き添う

必要があったものと認められるとして1日3300円の通院付添費を認め

ⅱ 5月9日以降も、被害者が受傷したのが、アクセルやブレーキを踏むために必要な右足であるこ

と、同日時点では患部の骨癒合には至っていなかったこと、同年7月10日には運転をしていたが、

足の痛みを訴えていたことに鑑みれば、全荷重が許可されたからといって直ちに、自動車を運転する

ことができるようになったものとは認められないが、職業的な大型車の運転に比べ、通院や日常生活

のために自家用車を運転したとしても患部である右足に加えられる負担は小さいものと認められるか

ら、付添いの必要性は徐々に減少していったものと認められるとして、1日あたり3300円×0・

25の通院付添費を認めました。

同じ骨折といっても、松葉づえを常時使用する必要があったか、骨癒合や痛みの程度等によって通院付添費についての判断がわかれることになります。

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