死亡時の逸失利益と定期金賠償(交通事故)

交通事故

1 逸失利益と定期金賠償

交通事故の損害賠償において、将来介護費のように、症状固定後に継続的に発生し続ける損害については、一括払いとしてしまうと、中間利息控除をされて金額が低くなってしまう、想定より長生きした場合にもやはり本来もらうべき金額より安くなってしまうという問題があります。

そこで、将来介護費などについては、将来にわたり定期的に一定額を支払うという定期金賠償が認められる可能性があります。

この点、逸失利益も、将来の稼動能力に対応した損害であり、定期金賠償が認められないかどうか問題となります。

札幌高裁平成30年6月29日判決は、以下のとおり述べ、後遺障害の逸失利益については定期金賠償を容認しています。

「将来介護費用については,定期金賠償の方法が問題なく認められるところ,将来介護費用と後遺障害逸失利益とを比較した場合,両者は,事故発生時にその損害が一定の内容のものとして発生しているという点に加えて,請求権の具体化が将来の時間的経過に依存している関係にあるような損害であるという点においても共通している(この点において慰謝料などとは本質的に異なっている。)。後遺障害逸失利益の上記の性質を考慮すると,後遺障害逸失利益についても定期金賠償の対象になり得るものと解され,定期金賠償を命じた確定判決の変更を求める訴えについて規定する民訴法117条も,その立法趣旨及び立法経過などに照らして,後遺障害逸失利益について定期金賠償が命じられる可能性があることを当然の前提としているものと解すべきである。」

他方、名古屋地裁平成26年8月21日判決は、以下のとおり述べ、死亡時の逸失利益について定期金賠償は認められないとしています。

「民事訴訟法上,定期金賠償による判決を行いうることは予定されている(民事訴訟法117条参照)ところであるが,これは介護費用等のように,将来,被害者に具体的に生じる損害を前提としたものと解される。そもそもAの死亡に伴う損害は,Aの死亡時に既に具体化していると観念されるのであり,その額も確定していると解され,将来において具体化するものでも将来の事情によりその額が変動するものでもない。
この点,死亡逸失利益が将来において回帰的に現実化していくものであると考えて定期金賠償になじむとする見解は,その前提において妥当でない。
また,定期金賠償方式によれば中間利息を控除する必要がなく実勢利率と法定利率の乖離の問題を解消できるとするが,これは中間利息の控除率の問題であって,その点は既に被害者の将来の逸失利益を現在価額に換算するために控除すべき中間利息の割合は,民事法定利率によらなければならないというべきである(最高裁第3小法廷判決平成17年6月14日民集59巻5号983頁)とされているところであり,定期金賠償方式によって解消すべき問題でもない。
したがって,Aの死亡逸失利益について,原告らの主張するような定期金賠償を命じることは相当でない。」

このように死亡時の逸失利益については認められない可能性が高いように思われます。

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