不貞と違約金の定めの効力

離婚問題

1 不倫と違約金の効力

不貞があった場合などにおいて、再度不貞や接触があったときなどに違約金を支払わせる旨の示談がなされることがあります。

このような示談についてはかなりの確率でその効力の全部または一部が否定されることがあります。

例えば、東京地裁平成18年6月30日判決は、以下のような内容の示談が成立したにも関わらず、被告が原告の配偶者と接触を取ったことを理由に、違約金500万円などの請求を求める裁判について、一部示談の効力を否定しました。

示談の内容は以下のとおりです。

①被告は,本件行為を深く反省し,原告に対し,心からお詫びをする。
②被告は,原告に対し,方法の如何を問わずAに接触ないし連絡を取る等の行為を一切しないことを確約する。
③被告は,原告に対し,本件行為の慰謝料として200万円を支払う。
④被告が2項の確約に反し,Aと接触する等の行為に及んだ場合,又は被告が前項の原告への支払を怠った場合は,被告は,原告に対し,違約金として500万円を支払う。ただし,Aにおいて被告に接触する等の行為に及んだ場合は,この限りではない。
⑤原告及び被告は,本件示談書に記載されたもの以外,何らの債権債務がないことを相互に確認する。

 

裁判所は、被告は示談成立後に原告の配偶者と温泉に行っているなどしているので、違約金が払われるべきものとしました。

しかし、裁判所は、被告の父が原告の配偶者に対し被告に連絡を取らないよう求める手紙を出したのに配偶者において被告と連絡を取っていること、被告による原告配偶者との接触も原告配偶者が誘ったという面が強いこと、原告もその配偶者に注意をした形跡がなさそうであること,原告が配偶者に示談について知らせていないこと、配偶者が被告に連絡を取るなどしていたことを知りながら原告がこれを止めさせるなどの措置をとった形跡も見当たらないこと,原告が配偶者を自宅から閉め出すなどしていて配偶者との関係を修復する努力を払った形跡は窺われないこと,被告と配偶者との間の交際は訴訟提起前には終了していること,原告配偶者は以前にも別の男性と不貞行為をしたことがあること,原告と配偶者は別居しているが未だ離婚していないこと,よって被告との不貞行為が原因で原告と配偶者の間の婚姻関係が破綻に瀕しているとはみられないことなどを踏まえ、違約金の4割である200万円についてだけ請求を認めました。

確かに、私的自治が大原則ですから、示談の効力は原則として有効といわなくてはなりません。

しかし、接触をしただけで不貞をした場合の慰謝料より高額な違約金の支払いを認めるのはバランスを欠くといわなくてはならず、裁判所の判断は穏当だったと思われます。

2 違約金請求と弁護士費用、興信所費用(探偵費用)

不貞による慰謝料請求をする場合、相当な範囲で弁護士費用や興信所費用の請求が認められます。

それでは、不貞を理由とする違約金請求があった場合はどう考えるべきでしょうか?

この点、東京地裁令和3年2月24日判決は、弁護士に依頼することや興信所の調査を利用することが違約金請求に必要であったとして、相当な範囲の弁護士費用や興信所費用の請求を認めています。

3 違約金の受領と損害賠償への影響

不貞による慰謝料請求の場合、不貞をした配偶者と不貞相手は、連帯して慰謝料を支払う義務を負います。

つまり、一方が100万円を払った場合、他方が払うべき金額は100万円をマイナスしたものとなります。

このような関係(不真正連帯債務の関係)が不貞を理由とする違約金請求にも妥当するでしょうか?

この点、東京地裁令和2年6月16日判決は、「本件合意に基づく債務は,Aが原告に対して負う,被告とAの不貞行為を原因とする不法行為に基づく損害賠償債務と不真正連帯債務の関係にあると解すべきであるから,原告が被告から本件合意に基づく示談金を受領した場合,被告との不貞行為を原因とする,Aの原告に対する損害賠償債務は,被告から弁済を受けた限度で消滅すると解すべきである。」として、不貞による慰謝料請求同士と同様、慰謝料債務と違約金債務は不真正連帯、つまりどちらかが払えばその分他方が払うべき分が減るという関係にあるとしています。

4 新潟で不倫、不貞のご相談は弁護士齋藤裕へ

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