賃料や配当を婚姻費用算定の上で収入として算定した事例

離婚問題

執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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1 賃料や配当が婚姻費用算定上考慮されるか

婚姻費用は夫婦双方の収入をもとに算定されます。参照:婚姻費用算定表

そして、通常、収入は給与であったり、自営業者の所得であったりします。

しかし、賃料や配当などで暮らしを立てている人もいます。

そこで、賃料や配当など、夫婦の一方が持っている財産から発生する収入(法定果実といいます)を婚姻費用算定の際に収入として考慮できるかどうか問題となります。

この点、大阪高裁平成30年7月12日決定は、以下のとおり述べて、賃料や配当も収入として認定されるとしました。

「相手方の特有財産からの収入であっても、これが双方の婚姻中の生活費の原資となっているのであれば、婚姻費用分担額の算定に当たって基礎とすべき収入とみるべきである」

つまり、賃料や配当は、それが自動的に婚姻費用算定の際の収入として扱われるのではなく、同居中に生活費の原資となっている場合には婚姻費用算定の際の収入として扱われるということです。

その上で、同決定は、以下のとおり述べ、当該事案において、賃料や配当が同居中の生活費の原資となっていたとして、婚姻費用算定にあたって収入として扱うべきとしました。

「相手方は、婚姻後、抗告人に対し、Aからの給与(月額8万円)のほか、さらに、生活費として7万円を渡し(合計15万円)、その5か月後から別居3か月前までの1年4か月間、生活費を月額10万円に増額した(同18万円)。相手方が抗告人において食費(月2万円ないし3万円)の残りを使ったと述べていることからすると、同居中、月額約15万円が抗告人において費消し得た金額であったことになるが、この金額は、前記(4)の算定額に近似している」

「そうすると、同居中の双方の生活費の原資が相手方の役員報酬に限られていたとみることはできず、婚姻費用分担額の算定に当たって基礎とすべき相手方の収入を役員報酬に限るのは相当ではない」

ここで「前記(4)の算定額」とは、賃料や配当なども収入として計算した場合の相当な婚姻費用額のことです。

このように、判決は、実際の生活費額を算定し、その額からして賃料や配当が原資になっているとの認定を行い、最終的には賃料や配当を収入として認定した上で婚姻費用を算定すべきとしました。

このような考え方は、生活の実態を踏まえた適切な婚姻費用額を算定することにつながるものであり、妥当といえると考えます。

2 新潟で婚姻費用、離婚のお悩みは弁護士齋藤裕へ

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