KAT-TUN元メンバーの逮捕映像流出と法的責任

さいとうゆたか弁護士

報道によると、関東信越厚生局麻薬取締部がKAT-TUNの元メンバーである田口淳之介さんを逮捕した際の動画をテレビ制作会社に提供したとのことです。

報道によると、当該動画には自宅マンションで捜索し、手錠をかける様子も含まれているとのことです。

当然、プライバシーの侵害の問題が生じうるところです。

柔道整復士法違反の被疑者が、脊椎矯正術を施術する診察室なども含む建物内において、うどんを食べているときに、警察の捜索差押さえを受けたという状況において、報道機関がその様子を撮影しテレビ報道したという件について、神戸地裁姫路支部昭和58年3月14日判決は、以下のとおり述べて、報道機関による違法なプライバシー侵害はないと判断しました。

同判決は以下のとおり述べます。

 「原告は、被告ら報道機関の担当記者が原告方に無断で立入り、原告がうどんを食べている姿などを無差別に写真撮影(とりわけ被告日本放送協会はうどんを食べている原告の姿をテレビニュースにて放映)し、原告のプライバシーや肖像権を侵害した旨主張しているが、右記者らは、犯罪容疑を会に報道する目的をもって原告方に立入ったが 同所は居住のみに使用される純然たる住宅ではなく、第三者の来集をも当然に予定した部屋をも含む建物であったこと、同人らは、約一五分間、右建物のうち患者待合室及び診察室に留まって令状の執行状況を写真撮影するなど取材活動を行ったこと、もっとも、右記者らの一部に、原告がうどんを食べている姿を撮影した者もいるが、これはあくまで令状による執行開始直前の状況を撮影した際にたまたま原告の右姿が写ったにすぎないこと及び原告は右記者らの行動に何ら苦情を申立てていないことは前記認定のとおりである。」
「そうすると、右記者らの原告方立入及び写真撮影は、その目的、方法及び態様とも穏当を欠くものとは認められず、且つ原告が右立入等を欲せず拒否しようとすれば十分その機会会があったにも拘らずこれを黙認した事実に照らすと、右立入及び写真撮影を以って原告のプライバシーや肖像権を侵害する違法なものとは到底評価できないと云うべきである。」

これと今回の件とを比べた場合、今回は純然たる住宅における撮影が問題となっていること、報道目的ではなく撮影された動画が目的外で流出したこと、撮影時間が長時間に及ぶこと、手錠がされるなど屈辱的な状況が撮影されているなどの違いがあります。

報道機関自身が撮影をすることは取材の自由により保障されやすいでしょうが、公権力が目的外で動画を提供することを正当化する余地は小さいと思われます。

以上より、今回の動画提供については違法なプライバシー侵害と評価される可能性が高いように思います。

徹底的な実態解明と適正な処分が待たれると考えます。

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