伐木作業中の事故と労災 新潟県の労災は弁護士齋藤裕に御相談ください

交通事故

執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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1 伐木作業中の事故と労災

新潟では伐木作業中の労災が多く発生しています。

伐木作業中の労災は、死亡事故につながることも少なくなく、また、使用者の安全配慮義務違反が認められるケースも相当数あると考えられます。

2 安衛則と伐木作業についての安全配慮義務

安衛則は、以下のとおり、伐木作業における安全衛生基準を定めており、それに違反した場合には安全配慮義務違反が認められ、損害賠償が命じられる可能性が高いと言えるでしょう。

第四百七十七条 伐木にあたり、予め退避場所、かん木等危険性のあるものを除去すること、胸高直径20cm以上の木について受け口、追い口を作ること
第四百七十八条 かかり木の早期処理
第四百七十九条 伐倒にあたっては相図をること
第四百八十条 造林にあたり、伐倒木、玉切材、枯損木等の木材について、くい止め、歯止め等をすること
第四百八十一条 造林、伐木、かかり木の処理、造材又は木寄せの作業を行つている場所の下方で、伐倒木、玉切材、枯損木等の木材が転落し、又は滑ることによる危険を生ずるおそれのあるところなど危険な箇所には、労働者を立ち入らせてはならないこと
第四百八十三条 強風、大雨、大雪等の悪天候のため、造林等の作業の実施について危険が予想されるときは、当該作業に労働者を従事させてはならないこと
第四百八十四条 造林等の作業を行なうときは、労働者に保護帽を着用させなければならないこと。
第四百八十五条 チェーンソーを用いて行う伐木の作業又は造材の作業を行うときは、労働者に下肢の切創防止用保護衣を着用させなければならないこと

3 伐木作業における労災と裁判例

伐木作業における労災に関する裁判例としては岡山地裁倉敷支部平成30年10月31日判決ほか多数があります。

ヘルメットなどを装着させなかったことが注意義務違反となるとした裁判例

岡山地裁倉敷支部平成30年10月31日判決は、以下のとおり述べ、伐木作業中の労災について安全配慮義務違反を認めました。

被告は、少なくとも、作業に特に必要な保護具であるヘルメットや呼子を備え、着用させることによって、木の伐採作業の遂行に当たって生じる危険を防止すべき安全配慮義務を具体的に有していたといわざるを得ない

しかるに、被告は作業員全員についてヘルメットや呼子などを用意しておらず、そのため、ヘルメットを被らずに作業を行うことが常態化していることを容易に認識し得たにもかかわらず、何ら必要な指示、指導を行っていないというのであるから、被告には安全配慮義務違反があったと評価せざるを得ない

被告からは、原告が被告に対しヘルメットや呼子等の支給を求めていなかった過失があり、過失相殺がなされるべきとの主張がなされていました。

これについて、裁判所は、以下のとおり述べ、過失相殺を否定しました。

原告は、被告に対してヘルメットや呼子等の支給を求めることが望ましかったとはいえるものの、少なくとも、特に必要な保護具であるヘルメットや呼子などを用意し、安全を確保することが強く求められていたことからすると、この点につき、過失相殺を行うことが損害の公平な分担に適うとは言い難い

以上のとおり、同判決は、ヘルメットなどの保護具の支給を行わなかったことついて使用者の安全配慮義務違反を認め、過失相殺も認めませんでした。

保護具を支給することが使用者の義務である以上、その支給を求めなかったことが労働者の過失とされる余地は乏しいと考えられ、穏当な結論と思われます。

なお、同判決では、契約が労働契約かどうかも争われているところ、時間に対する対価として報酬が払われていること、作業場所・時間の拘束などを理由として、労働契約との認定がされているところです。

山割を適切にしなかったことを注意義務違反とした裁判例

鳥取地裁令和2年3月4日判決は、以下のように述べ、適切な山割をしなかったことをもって注意義務違反を認めています。

本件事故当時,狭い作業区域において,被告Y3・Y2,Aの3人が同時に伐木作業をしており,かつ,Aの林業経験は約2年,被告Y2及び被告Y3の林業経験は1年未満という熟練とはいいがたい作業員であったにもかかわらず,被告Y1が,適切な山割りを行わず,山割りを遵守するよう指示もしていなかったことは,これまでの事実からも明らかであり,山割りに関する措置を怠ったものとして,被告Y1には注意義務違反があったということができる

なお、同判決は、以下のとおり述べ、労働者側に35%の過失を認めています。

Aは,本件樹木の近くを通り,被告Y3・Y2が本件樹木を伐倒しようとしていること及び本件樹木のおおよその樹高を認識していたにもかかわらず,本件樹木から約27メートルという本件樹木の樹高よりも短い距離に存在し,立ち入ってはならない範囲に立ち入っていたというのであるから,Aには,その点について過失があったといわざるを得ない。そして,Aは,被告Y3・Y2が本件樹木を伐倒しようとしていることを認識していたのであり,どの範囲が危険区域かを理解し,その範囲外に出ることは容易であったということもできるから,その過失が軽いとはいえない。ただ,被告会社の代表者たる被告Y1が適切に山割りを行っていれば,経験が豊かとはいえない従業員3名による近接した伐倒作業が行われることはなかったのであるから,Aに重大な過失があるとまで評価するのは適切ではない。

4 新潟で労災のご相談は弁護士齋藤裕へ

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