経営陣側の従業員の長時間労働による労災と安全配慮義務違反

さいとうゆたか弁護士

1 経営陣側の従業員の長時間労働による労災

前回紹介した福岡地裁平成30年11月30日判決は、一時役員をしていたこともあるとされる従業員(自動車販売会社勤務)が長時間労働により心筋梗塞を発症した事案に関するものです。

そのため、会社側からは、被災労働者は経営陣側であった、よって会社としては被災労働者側に対し安全配慮義務を追っていなかったとの主張がなされています。

この点、判決は、以下のとおり述べ、会社に安全配慮義務違反があったことを認定しています。

「被告会社は、原告が高血圧症にり患しており、再検査や精密検査が必要とされる状態であることを認識していたといえるにもかかわらず、原告の勤務状況を的確に把握して業務の量又は内容を調整する措置を講ずることなく、本件疾病の発症までの間、上記のような過重な業務に従事させ続けたのであるから、上記注意義務に違反したものというべきである」

その上で、会社側からの弁解については以下のとおり述べます。

「安全配慮義務は雇用契約の信義側上の付随義務として一般的に認められるべきものであるから、原告が被告会社の従業員であった以上、過去に監査役又は取締役に就任していたとしても、そのことから直ちに被告会社が原告に対する安全配慮義務を負わないことになるものではない」

被告会社は、被災労働者が、決算報告会や四半期報告会に出席していたことなどから、経営陣側であったと主張しています。

しかし、判決は、以下のとおり述べ、それは経営陣側であることを示す事情ではないとしました。

「これらの会議は、被告会社の経営状況や部門別の業績について検討を行うものであるといえ、原告が、本件店舗の店長という立場で出席していたとしても不自然ではないから、これらの会議に出席していたことから、直ちに原告が経営側の立場にいたということはできない」

その他、給与の前借などをしていたという事情もありましたが、社内の手続に沿ってなされていただけであり、経営陣にいることを示すものではないとされました。

以上のとおり、現時点で労働者である者については、過去に経営陣に属していたとしても、原則的には安全配慮義務違反は認められます。

また、実質的に安全配慮を尽くすべき立場(経営陣)にいた者に対する安全配慮義務違反が免除される余地はありますが、枢要な会議に出席していたというだけでは経営陣にいたとの認定はされにくいことになります。

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