川遊び中の事故と幼稚園・保育園、キャンプ主催者側の損害賠償責任

執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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1 川遊び中の事故と幼稚園側の損害賠償責任

川遊びの際に発生する事故は後を断ちませんし、それを巡る訴訟も多く提訴されています。

松山地裁西条支部平成30年12月19日判決は、お泊り保育中の川遊びで園児らが流され、死亡などの重大な結果を生じさせた件について、園長や幼稚園を運営する法人に対する賠償責任を認めました。

この事案では、川遊びの場所は晴れているものの、上流で降雨があったという状況で増水し、事故が発生しています。

裁判所は、まず、以下のとおり、川で増水が生じうることの予見可能性を認めました。

「山間部の天候が変化しやすく、これを流れる河川の状況も、周囲の環境や天候等により変化しやすく、水量は上流域での降雨に影響され、遊泳場所付近が晴れていたとしても、上流域での降雨により遊泳場所付近で増水が生じることがあることは、一般的にもある程度知られていると考えられる」

「したがって、本件当時、被告教諭らと同様の立場にある一般人であれば、本件活動場所付近において、同所付近が晴れていても、上流域の校風によっては、本件活動場所付近において、下線の変化が生じ、ある程度の水量や流速の増加の危険性があることを予見することができたといえる」

裁判所は、川で増水が生じることの予見可能性を踏まえ、以下のとおり述べ、結果として次に園児らの生命身体に重大な危険が及ぶ蓋然性があったことを予見することができたとしています。

「本件活動場所の水深は、増水が生じていない場合でも、深いところで園児らの胸辺りとなることが想定されており、また、本件増水直前に撮影された写真によると、下流側石段直下における水深は、場所によっては成人女性の膝まであり、下流側石段から川の中央へ入った地点の水深は場所によっては成人女性の股下まで、園児は腰までつかる状態であり、こうした本件活動場所の状況は、これまでのお泊り保育の経験や下見により、被告教諭らにとって認識可能であった。このように、本件活動場所は、園児らからみれば、増水前でも相当程度の水深となることが想定されていたことからすれば、被告教諭らは、本件活動場所の水位がある程度上昇することにより、園児らが流されたりおぼれたりする危険性があることは認識し得たものということができる」

そして、裁判所は、園児らに危険が及ぶ予見可能性があったので、ライフジャケットを園児らに装着させるべきであったのに、これを装着させなかったとして、園側の注意義務違反を認めました。

川遊びの際に幼児にライフジャケットを装着させるべき注意義務があるとの判断は他の事例にも通用するものであり、本判決は川遊びの際の事故における責任を考える上で重要な意義を有すると思われます。

2 キャンプ主催者側の損害賠償責任

佐賀地裁令和1年12月20日判決は、社団が主催したキャンプ中の川遊びで8歳児が亡くなったことについて、法人側に賠償を認めています。

同事案では、事前に、川遊びの際は、参加していた大人が全員で監視することを計画していました。

しかし、実際に子どもたちが川遊びを始めた段階で、大人が監視していない状況にありました。

それにも関わらず、川遊びを防止しなかった点について注意義務違反が認められています。

監視義務も川遊びにおける事故を防止する上で重要なものですし、その不履行は損害賠償責任等に結びつくことになります。

3 新潟で川遊び、幼稚園・保育園をめぐる事故のご相談は弁護士齋藤裕へ

川遊びでの事故防止については水の安全ハンドブックもご参照ください。

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