元夫から元妻に対する建物明け渡し請求が認められなかった事例(離婚)

離婚問題

1 元夫から元妻への建物明け渡し請求が認められなかった事例

離婚から2年の間に夫婦あるいは夫婦だった者の一方は他方に財産分与を求めることができます。

この財産分与は、主に結婚後に得られた財産の夫婦共有持ち分を清算するものです。

しかし、財産分与の手続を経ない間においては、不動産などの財産はその名義人のものとされ、夫婦共有財産とはされません。

しかし、そのような扱いを徹底した場合、実質的には夫婦共有持ち分があるため、不都合な結果を招く可能性があります。

例えば、夫婦(あるいは元夫婦)の一方が不動産の単独所有名義を有している場合、一方がその所有権をもとに他方に不動産の明け渡しを求めることは、それが実質的には夫婦共有財産であるときには不合理な結果を招くこともありえます。

札幌地裁平成30年7月26日判決は、財産分与審判を経ていない建物を元夫が単独所有している場合に、元夫が所有権に基づき元妻に建物明け渡しを求めることは権利濫用となるとして、元夫の請求を認めませんでした。

同判決は以下のとおり述べます。

「婚姻期間中に形成された財産関係の離婚に伴う清算は財産分与手続によるのが原則であるから、本件マンションの帰趨は財産分与手続で決せられるべきであり、このことは本件マンションの住宅ローンの負債額が原告及び被告の総資産額の合計を上回っている場合であっても変わらない。このような意味で、被告は、財産分与との関係で、本件マンションの潜在的持ち分を有しているところ、当該持ち分はいまだ潜在的、未定的なものであっても財産分与の当事者間で十分に尊重されるべきである。よって、原告が、近々財産分与申立事件の審判が下される見込みである中、同手続外で本件マンションの帰趨を決することを求めることは、被告の潜在的持ち分を不当に害する行為と評価すべきであり、権利濫用に当たるというべきである。」

このように財産分与の手続をしているという事情はあったにせよ、所有権に基づく明け渡し請求について本来は財産分与手続により解決すべきという理由を述べ請求を棄却しています(なお、賃料相当損害金についての損害賠償請求については、権利濫用にはならないとして請求が認められています)。

夫婦間の財産をめぐる紛争については、まずは財産分与手続の中で解決をはかるのがスジであるし、早道だということでしょう。

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