執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
1 新発田第一中学いじめ自殺事件の事実関係
2020年1月24日、新発田第一中学いじめ自殺事件に関し、新潟地方裁判所に、ご遺族の代理人として損害賠償訴訟を提訴しました。
亡くなった生徒は、中学1年生のときから、からかい・冷やかしなどのいじめを受けてきました。
このからかいなどは、授業中になされることもあり、教諭も認識していました。
いじめは2年生になり悪化していきます。
生徒は、連絡ノートに、からかいを受けていたことを記載していました。ですから、担当教諭もいじめと評価されるべき事実があることを知っていましたが、特段の対応を取りませんでした。
その結果、2年生の6月に生徒は自殺しました。
このいじめ自殺事件については、新発田市いじめ防止対策等に関する委員会による調査報告書が出されています。
そこでも、1年次からいじめがあったこと、それが自殺の原因と推認されることが明記されています。
2 学校側の対応の問題点
上記調査報告書は、学校側の問題点について、以下のとおり指摘しています。
「特に、本件において、教職員は、Aがあだ名を言われたり、追いかけっこをしたりしているところで、心身の苦痛を感じていたという認識が無かったと説明しているが、重要なのは、いじめの定義の説明にある『けんかやふざけあいであっても、見えないところで被害が発生している場合もあるため、背景にある事情の調査を行う』ということである。本件中学校のいじめの理解では、当該重要部分が抜けており、本件においても、正に、教職員の見えない所で被害が発生し、Aの自殺という結果を防ぐことができなかったものである」
このように、教員においていじめを認識しうる事実関係を把握していながら、その評価が不十分で、適切な対応がなされなかったことを指摘しています。
このような学校側の不十分な対応は義務違反というレベルに達していると思われ、今回の訴訟の請求の理由の一つとなっています。
3 加害者氏名が開示されないこと
現在まで、新発田市教育委員会は加害者生徒の氏名を開示していません。
いじめや自殺との因果関係まで認められているのに、ご遺族は加害者の氏名すら教えてもらえていないのです。
ご遺族が加害者氏名も含めたいじめの事実関係を知りたいと思うのは当然であり、それを教えてくれないことも今回の訴訟の請求の理由の一つとなっています。
4 最後に
今回の訴訟を、いじめをなくし、また、いじめがあった場合の教育委員会による情報提供を改善させるきっかけにしたいと思います。
ご支援よろしくお願いします。
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