新型コロナウイルスによる肺炎の指定感染症指定

さいとうゆたか弁護士

報道によると、本日、新型コロナウイルスによる肺炎について、指定感染症として指定される見込みとのことです。

この指定感染症とは、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(以下、「感染症予防法」といいます)上の概念です。

感染症予防法6条は以下のとおり定めます。

第六条 この法律において「感染症」とは、一類感染症、二類感染症、三類感染症、四類感染症、五類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症及び新感染症をいう。
2 この法律において「一類感染症」とは、次に掲げる感染性の疾病をいう。
一 エボラ出血熱
二 クリミア・コンゴ出血熱

五 ペスト
8 この法律において「指定感染症」とは、既に知られている感染性の疾病(一類感染症、二類感染症、三類感染症及び新型インフルエンザ等感染症を除く。)であって、第三章から第七章までの規定の全部又は一部を準用しなければ、当該疾病のまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあるものとして政令で定めるものをいう。

このように、感染症予防法は、エボラ出血熱などの感染症を列挙し、それに同法の規定が適用されるとしつつ、新たに出現し、国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある感染症については、指定感染症として、感染症予防法の規定が適用されるものとしています。

新型コロナウイルス感染症については、死者が多数にのぼり、日本国内での感染者も出ている状況ですから、指定感染症に指定することは妥当といえるでしょう。

指定感染症となると、感染症予防法第七条により、「一年以内の政令で定める期間に限り、政令で定めるところにより次条、第三章から第七章まで、第十章、第十二章及び第十三章の規定の全部又は一部を準用する。」ということになります。

よって、政令の内容により、

・医師の都道府県知事への届け出をしなければならない、

・都道府県知事が、感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由のある者について健康診断を受診するよう勧告することができる(17条)
・感染症の蔓延を防ぐため必要があるときは、感染者の就業制限(18条)
・都道府県知事による入院勧告、強制的な入院(19条)

・一類感染症の蔓延を防止するため緊急の必要があり、消毒によりがたいときは交通の制限(33条)

との規定が適用されうることになります。

新型コロナウイルス感染症について、これらの規定のすべてが適用されるわけではないと思われますが、それでも一定の人権制約を伴うことも想定されます。

ですから、感染症予防法では、医師などで構成される感染症の診査に関する協議会が意見を述べる仕組みとされており(24条)、都道府県知事への苦情申し出もできることとされています(24条の2)。

感染予防に効果的な施策が求められるところですが、他方感染者に対する人権保障についても十分な配慮が求められるところです。

 

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