新型コロナ対策で休業拒否に罰則なら休業補償は必須

報道によると、政府は、新型コロナウイルス対策として、関連法の一括改正を検討しているとのことです。

その一環として、休業要請拒否に対する罰則も検討しているとのことです。

休業要請がなされた休業をした場合、当然損失発生が想定されます。

このような損失発生について現時点で明確に定めている法律はありません。

しかし、日本国憲法29条3項が「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる」としている趣旨からして、休業要請によって発生した損失については国が補填すべきと考えます。

日本国憲法29条3項は、公共の利益のために市民が特別の犠牲を払わされた場合において補償がなされなければならないという内容の規定です。

どのような場合に「特別の犠牲」があると言えるかは議論のあるところで、一部の人だけが犠牲を課される場合にあるという立場と、強度な制限がある場合にあるという立場とがあります。

現時点では、休業要請を強制する仕組みとしては公表程度なので、休業要請に従ったとしてもあくまで任意の協力でしかなく、「特別の犠牲」についてどのような理解をするにしても、休業補償を憲法に基づき請求することはできないという立論が十分ありえます。

しかし、罰則により休業要請が担保されることになると、「特別の犠牲」についていずれの立場に立つにせよ、休業要請を受けた一部の人はそのために売り上げや利益減少という大きな犠牲を強いられることになり、しかもそれは罰則により強いられることになるので任意とは言い難く、「特別の犠牲」はあるとすべきだと考えます。

ですから、罰則を背景にした休業要請により賃金や売り上げが失われた場合には、公共のために賃金や売り上げという財産が失われるという特別の犠牲を課されたとして、補償がなされるべきものと考えます。

日本国憲法29条3項においてこのように解釈すべきというだけではなく、休業補償がなされるということで事業者において休業要請に応じやすくなりますので、目的を達成する手段として優れているともいえるでしょう。

休業要請拒否に対する罰則を設けるのであれば、法律にきちんと補償の要件・効果(補償金額の計算方法等)を規定し、簡単に補償を受けられるようにすべきです。それが日本国憲法29条3項の要請するところだと考えます。

なお、同時に、財源についても、消費税導入時になくなったパチンコに対する課税など、経済にダメージを与えない方法を検討すべきでしょう。

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