低酸素性虚血性脳症と医療過誤

新生児の低酸素性虚血性脳症は一生にわたり重大な障害を残しかねないものです。

中には医療過誤により発症するものもあります。

以下、医療過誤により低酸素性虚血性脳症が生じたと認定した裁判例を紹介します。

1 胎児心拍数波形のレベルに応じた対応をとらなかったため低酸素症虚血性脳症

広島高等裁判所岡山支部平成30年7月26日判決は、病院において出生した控訴人に,低酸素性虚血性脳症による脳性麻痺の障害が残ったことに関し,医師らには分娩監視を適切に行わなず、帝王切開が遅れた過失があるとの判断を示し、医療法人らに対する損害賠償責任を認めました。

原判決は、分娩監視について過失を認めず、地裁高裁で判断が分かれており、参考になる裁判例と思われるのでご紹介します。

控訴人らは、産科ガイドラインの記載を根拠に、医師らは胎児心拍数波形のレベルに応じた対応と処置をすべきであったのに、医師らが怠ったと主張していました。

これを受け、裁判所は、胎児心拍数波形のレベルに応じた対応と処置については,「背景因子(妊娠週数,母体合併症,胎児の異常,臍帯・胎盤・羊水の異常,分娩進行状況等),経時的変化及び施設の事情(緊急帝王切開術の準備時間等)によって,当該措置を採ることが医師及び助産師の義務になるというべきである」としました。

その上で、当該事案については,

ⅰ 高度遷延一過性徐脈(レベル4)があった
ⅱ 本件病院の規模及び設備からすれば,産科ガイドラインの胎児心拍数波形のレベルに応じた対応と処置を行うことが困難であるとは認められない
などの事情を踏まえ、出産日の午後9時25分ころには、産科ガイドラインの胎児心拍数波形のレベルに応じた対応と処置を採ることが具体的注意義務となっていたとしました。

その上で、午後9時28分に約3分間の高度遷延一過性徐脈があったことからすれば,急速遂娩を実行する法的な注意義務があったといえるのに、これをおこわなかったとして、医療法人等に賠償責任を認めました。

このように、胎児心拍数波形のレベルに応じた対応と処置がなされなかったために障害が残るなどした場合には損害賠償責任が生じずる場合がありますので、重大な事故が発生した場合には胎児心拍数波形に注目することが必要となります。

2 無痛分娩における義務違反と低酸素性虚血性脳症

京都地裁令和3年3月26日判決は、無痛分娩における麻酔ミスにより低酸素性虚血性脳症が生じた事案について判断をしています。

この事案では被告は過失を争っていませんが、同事案では、

ⅰ カテーテルを硬膜外腔にとどめた上で麻酔薬を分割投入する義務の違反

ⅱ 全脊髄麻酔症状となった場合に速やかに呼吸を確保し、血圧の回復ができるよう、人工呼吸器等を準備し、あらかじめ太い静脈路を確保しておく義務の違反

について債務不履行が認められ、賠償が命じられています。

 

3 血糖値測定義務違反と低酸素性虚血性脳症

大阪高裁平成31年4月12日判決は、低出生体重児であり、IUGR児であった新生児が低酸素性虚血性脳症となった事案についての判決です。

同判決は、予防的に早期にブドウ糖溶液の点滴等を行わないのであれば、定期的に血糖値を測定する注意義務があったと認められるとした上で、その義務違反を認定し、賠償義務を認めています。

4 帝王切開等の準備義務違反と低酸素性虚血性脳症

高知地裁平成28年12月9日判決は、高度遅発一過性徐脈が複数回発生している場合において、クリステレル又は帝王切開の実施すべきかを検討し,いずれかの準備に着手し,これを実行すべき注意義務があったとして、その義務が果たされず、新生児に低酸素性虚血性脳症が発症した事案について賠償義務を認めました。

5 陣痛促進剤の過剰投与と低酸素性虚血性脳症

広島地裁福山支部平成28年8月3日判決は、「使用上の注意事項に記載された初期投与量及び増量時の点滴速度に従わずにアトニンを投与しており,特段の合理的理由がない限り,アトニンの投与方法につき過失が推定される」として、使用上の注意に記載された量を超えた陣痛促進剤を投与し、新生児に低酸素性虚血性脳症が発症した事案について医師側の過失を認め、賠償義務を認めています。

6 新潟で医療過誤は弁護士齋藤裕へ

以上のとおり、新生児の低酸素性虚血性脳症については、医療過誤によるとされるケースも少なくありません。

新生児の低酸素性虚血性脳症等の医療過誤でお悩みの方は、弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)にお気軽にご相談ください。

脳腫瘍の見通しと損害賠償についての記事
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