年少女子の逸失利益算定(交通事故)

交通事故

1 年少女子の逸失利益

現実社会では、男性の平均収入の方が女性の平均収入より高くなっています。

よって、交通事故による損害賠償においても、男性と女性とで金額が違うということが起こり得ます。

特に、労働能力を失ったことについての賠償である逸失利益の賠償については、女性については女性の平均賃金(賃金センサスによるもの)を使うことにより、男性より賠償される金額が低くなることが多いです。

しかし、このような扱いが常になされるものではなく、義務教育を受けている年少女子については男女共通の平均賃金をもとに算定するという扱いが定着しています。

2 裁判例

以下、裁判例をご紹介します。

東京高裁平成13年10月16日判決は、以下のとおり、死亡時11歳の女児について、女性の平均賃金を基準として逸失利益計算することを肯定しています。

以上のとおり、賃金センサスに示されている男女間の賃金格差は、現実の賃金の実態を反映したものであり、この格差が近い将来に解消するとは認められない。
そうすると、上記格差が解消することを前提に、女子年少者について、賃金センサスによる全労働者の平均賃金を基礎収入として逸失利益の額を算定し、不法行為者にその損害賠償をさせることは、現段階においては、できる限り蓋然性のある額を算定することにより不法行為者と被害者の双方にとって公平な結果を実現しようという前記の考えに照らして、必ずしも合理的な損害賠償額の算定方法ではないといわざるをえない。

しかし、東京高裁平成13年8月20日判決は、以下のとおり述べ、義務教育までの女子について、男女共通の平均収入を前提に逸失利益を計算すべきとしています。このような考え方が現在の主流といえます。

したがって、高等学校卒業までか、少なくとも義務教育を修了するまでの女子年少者については、逸失利益算定の基礎収入として賃金センサスの女子労働者の平均賃金を用いることは合理性を欠くものといわざるを得ず、男女を併せた善労働者の平均賃金を用いるのが合理的と考えられるのであって、このように解しても、逸失利益を過大に認定することにはならないものというベきである。

近年では、大阪地裁令和4年7月26日判決が以下のとおり述べ、12歳女子について、男女計学歴計全年齢平均賃金をもとに逸失利益を算定すべきとしました。

被告は,女子全年齢平均賃金を基礎収入とするべき旨主張するが,年少者について事故による後遺障害がなかった場合にどのような学歴を重ね,就労することになったかを適確に予想することは極めて困難である上,女性の社会進出が一層進むことも想定され,現在の男女間の賃金格差が現状のまま将来において固定化し続けるものとは直ちにいえないことによれば,原告X1が将来において得る蓋然性のあった収入額が女子全年齢平均賃金額にとどまるものとするのは相当でな」い

義務教育後の女子については、京都地裁令和1年10月24日判決が、以下のとおり、女子の平均賃金を基準に算定をしています。

高校3年生の女子であり,現在,大学生であること,原告は,本件事故により傷害を受け,その後遺障害につき障害等級13級の認定を受けたことなどからすると,原告の後遺障害による逸失利益は,次のとおり,601万7343円と認められる。計算式:457万2300円(基礎収入,平成28年の賃金センサス,女性の大学・大学院卒,全年齢計」)

しかし、男女共同参画の進展に伴い、今後は義務教育以降の女性についても男女共通の平均賃金で逸失利益が計算されるようになると見込まれます。

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