執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
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1 会社が休業した場合の賃金について規定する民法536条2項
会社が何らかの事情で休業せざるをえなくなった場合、賃金はどうなるでしょうか?
この点、民法536条2項は、以下のとおり定めます。
「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない」
これを労働契約に即して言うと、使用者に責任がある理由で従業員が勤務できなくなったとき、従業員は給料を失わないということになります。
例えば、東京地裁令和3年9月16日判決は、景表法違反の広告により、法律事務所が、業務停止処分を受け、そのために休業をしたという事例について、
「本件各広告表示が一般消費者に実際よりも著しく有利な取引条件であると誤認させ,一般消費者の自主的かつ合理的な選択を損害するおそれがあるものであって,これを掲載することが景表法4条1項に違反し,ひいては弁護士の業務広告に関する日弁連の規程にも抵触することは容易に認識することができたというべきである。」として、休業について使用者側に責任があり、労働者は賃金を失わないと判断しました。
2 労働基準法26条と休業手当
使用者に民法536条2項でいう帰責性までない場合でも、労働基準法26条により、賃金の6割分の休業手当が認められる場合があります。
労働基準法26条は、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」としています。
休業手当の具体的計算方法は厚生労働省のサイトを参照してください。参照:休業手当の計算方法
労働基準法26条にいう帰責性については、「機械の検査、原料の不足、流通機構の不円滑による資材入手難、監督官庁の勧告による操業停止、親会社の経営難のための資金・資材困難」などが考えられます(菅野和夫著「労働法第12版」457頁以下)。
例えば、東京地裁令和3年12月13日判決は、「労働基準法26条の休業手当は,労働者の最低生活を保障する趣旨で定められた規定であり,同条所定の使用者の帰責事由は,使用者側に起因する経営,管理上の障害を含むものと解するのが相当である。前記認定事実によれば,被告は,平成31年3月25日,事業を停止し,原告を含む全従業員に対して休業を命じたこと,同休業の事由は,被告が親会社であるAから資金の供給を停止されたことによるものと認められる。」として、親会社による資金停止を理由とする休業につい休業手当を支払うべきものとしています。
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