飲酒運転を放置した者の損害賠償責任(交通事故)

交通事故

1 飲酒運転を放置した人の賠償責任

飲酒運転で交通事故が発生した場合に、運転者以外の人が賠償責任を負うことがあります。

ⅰ 同席者がともに飲酒をしたり、運転者に飲酒をすすめるなど、飲酒に深く関わっていること、

ⅱ 運転者以外の者において、運転者が飲酒のため酩酊し、あるいは正常な運転ができない状態であるのに、運転をすることを予見しえたこと、

ⅲ その上でそれを制止しなかったなどの注意義務違反があること

などの要件が満たされる場合、運転者以外の者が賠償責任を負う可能性があります。

以下、裁判例からどのような場合に飲酒運転を放置した者の賠償責任が認められるのかを見ていきます。

2 飲酒運転に深く関わっていたこと

名古屋地裁平成26年1月31日判決は、飲酒運転をしていた者と同じ店で飲酒をしていた同席者について、飲酒を勧めたと同視できる事情がなかったとして、賠償責任を否定しています。

この事例で、同席者は、

ⅰ 運転者から呼ばれて店に行った、

ⅱ 店にはいたが、運転者とは別のところにいて、飲酒はしていなかった

という事情がありました。

判決は、「飲酒運転をするおそれがある者と長時間にわたり飲酒をともにするなど,積極的に飲酒を勧めたと同視できるだけの事情を有する者が,飲酒の影響により正常な運転ができない状態にあることを認識でき,かつ,運転することが予見できたにもかかわらず,飲酒運転を阻止する措置を講じなかったことを要するところ,被告は,Bに積極的に飲酒を勧めたと同視できるだけの事情を有するものではない」として賠償責任を否定しています。

他方、仙台地裁平成19年10月31日判決は、長時間一緒に運転者と飲んでいた同席者について、賠償責任を認めています。

ここからすると、原則、長時間飲酒をともにしていた場合には飲酒運転に深く関与したものとして賠償責任を負う余地があるものの、運転者から呼ばれて同席したに過ぎない、同店内でも常に一緒にいたわけではない、同席者は飲酒をしていないなどの場合においては賠償責任が否定される場合もあると考えられます。

3 飲酒運転の予見可能性

飲酒運転の予見可能性としては、

ⅰ 飲酒し、正常な運転ができない状態となっていることの予見可能性

ⅱ 運転することの予見可能性

に分けられるでしょう。

ⅰについて、上記名古屋地裁平成26年1月31日判決は、4~5時間飲酒した運転手が眠そうにしていても、正常な運転をなしえないことを具体的に予見できたといえないとしています。

他方、仙台地裁平成19年10月31日判決は、6時間以上飲酒をともにしていたことから、予見可能性を肯定しているようです。

この点の予見可能性は、飲酒時間や酒の種類、運転開始時の運転者の状態、運転者以外の者と運転者がどの程度接近して飲酒をともにしていたのかなどから判断されることになるでしょう。

ⅱについて、大阪地裁令和2年2月26日判決は、交通事故で被害者が死亡した事件について、飲酒運転を放置した者の損害賠償責任を否定しています。

この訴訟で、遺族は、加害者と一緒に酒を飲んでいた同席者について、加害者がアルコールの影響により自動車の正常な運転が困難であることを認識していたのに、これを制止することなく運転を容認したとして、同席者に賠償責任があると主張しました。

これに対し、判決は、同席者らにおいて、酒を飲んだ者が運転をしないことを前提とした行動をしていたことを踏まえ、同席者らにほう助の責任が成立しないとしています。

他方、仙台地裁平成19年10月31日判決は、同席者が運転者に、従来飲酒後自動車で家に送り届けてもらっていたという事情がある場合において、運転者が運転をすること予見可能性

を認めています。

4 制止などしなかったこと

山形地裁米沢支部平成18年11月24日判決は、「被告丙川及び被告丁田は,被告乙山が相当量の飲酒をしていることを認識しうる状況にありながら,被告乙山の飲酒運転を制止するどころかこれに同乗していたこと」から、同乗者に損害賠償義務を認めました。

東京地裁平成18年7月28日判決は、運転者と長い時間一緒に飲酒し、運転者が酩酊状態にあり、かつ、自動車を運転して帰宅することを認識しえた人について、代行運転を頼むことをうながすにとどまり、運転者を駐車場に残したまま、運転者とは別途帰宅したというケースについて、飲酒運転を幇助したものと評価しました。

このように、飲酒運転であること等を知りつつ同乗するケース、同乗をしなくても飲酒運転をとめるために真摯な対応をしなかったケースについて注意義務違反ないし幇助が認められ、運転手以外の人の賠償責任が認められる可能性があります。

この注意義務違反は、飲酒を誘った者のように飲酒運転への関与が深い者については容易に認められるでしょうし、飲食店の従業員のように関与が薄い者については一応飲酒運転をしないよう促せば認められにくいでしょう。また、運転手が深酒をしている場合、運転をする可能性が高い場合には、運転を制止するためにかなり突っ込んだ対応が要求されることになりがちでしょう。

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