職場内クラスター発生と安全配慮義務 新型コロナ法律相談 その10 

さいとうゆたか弁護士

1 緊急事態宣言解除後最多の東京55人、人材派遣会社での職場クラスターが影響か

報道によると、本日の東京の新型コロナ感染者数は緊急事態宣言解除後最多の55人となった、その中には職場クラスターの案件が多く含まれているということです。

企業は、労働者の安全に配慮しなければなりません。

感染症との関係でも全く同じです。

2 感染症と安全配慮義務についての裁判例

例えば、看護助手が、業務中にC型肝炎に罹患したという事件についての大阪地裁平成16年4月12日判決は、以下のとおり述べ、使用者は感染症との関係でも労働者の安全を守るよう配慮する義務があると述べています。

「使用者は,雇用契約上の付随義務として,労働者が労務提供のため設置された場所,設備若しくは器具等を使用し又は使用者の指示のもとに労務を提供する過程において,その職種,労務内容,労務提供場所等の具体的状況等に応じて,労働者の生命,身体等を危険から保護するように配慮すべき義務(安全配慮義務)を負っている。
そして,原告が勤務していた病院等の医療現場においては,医療機関としての性質上,様々な身体・精神症状を呈する患者を受け入れ,その治療のために種々の医療器具や危険な薬品を使用したり,急患等の緊急事態にも対応する必要があるなど,患者のみならず,診療・看護に従事する職員にも危険が生ずる場合があり,特に,常に病原体による感染の危険にさらされているのであるから,使用者にあっては,管理体制を整え,適切な感染予防処置を講じるなど,被用者が安全に業務に従事できるように配慮すべき義務があるというべきである。」

3 新型コロナウイルスと安全配慮義務

新型コロナウイルスとの関係でも、当然使用者には安全配慮義務がありますし、それを尽くさずに労働者が新型コロナウイルスに感染した場合、慰謝料や休業損害などの損害について賠償する義務を負うことになるでしょう。

この義務内容は新型コロナウイルスの感染がひどい地域とそうではない地域では異なってくるはずです。

毎日二けた以上の感染者が発生している東京においては、相応の安全配慮義務が求められるでしょう。

消毒液、マスク、換気、衝立の設置などはもちろん、発熱などの症状がある従業員の出勤停止、感染者がいることが懸念される場合の事業休止も安全配慮義務に含まれる可能性があります。

今回の職場クラスター発生により、使用者としては職場内クラスター発生の予見可能性が高まったと言えますし、上記の感染防止対策をすべき義務は一層強まったと言えるでしょう。

これらの安全配慮義務違反を原因として職場で感染者が発生した場合、使用者には損害賠償義務が生じる可能性があります。

従業員としては、この安全配慮義務の履行を求めるため、裁判所に仮処分を申し立てたて、特定の安全配慮義務を尽くすよう求めることもありうると考えます。

4 新型コロナのご相談は新潟の弁護士齋藤裕へ

会社が新型コロナウイルス対策をきちんとしてくれないとお悩みの方は、弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)にお気軽にご相談ください。

安全配慮義務違反については、長時間労働と安全配慮義務違反についての記事もご参照ください。

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